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エストニア共和国より愛をこめて

北欧の小国に留学中の大学生が当地への留学や観光、社会生活についての情報などをお届けします

「日本SUGEEE!!!」って言っている場合じゃないかもしれない

社会

エストニアに来て間もなく1年になります。タリン大学にはアジア研究学科があって、日本語を勉強している学生さんも20人くらいはいるのかな。私もちょくちょく交流しているのですが、みなさんとても研究熱心で「新古今和歌集を勉強したんだけど西行って超クールですね」とか「西日本の方言についての研究をしていますがめっちゃおもろいですね」といった意見に驚かされることもしばしばです。学術的なこと以外だと、来日経験がある学生さんが「一蘭一風堂の緬の違いについて」を熱心に語ってくれたりだとか(どちらも博多の有名なラーメン屋らしいです)。私も日本人ですから、日本の文化に関心を持って勉強している学生さんたちと話せて大変うれしいし、その知識の深さを尊敬するばかりです。

ただ、同時に「日本の良くないと思うところ」というのも彼らはけっこう率直に語ってくれますよ。「日本の障がい者への福祉政策は極めてよくないとね」とか「日本型雇用は極めて硬直的で、制度から外れた人は戻るのが困難だからひきこもり(←この日本語そのままヨーロッパでも使われてました!)の問題が生まれるのだと思う」とか。こういった指摘に耳を傾けるのもとても大事なことだと思うんですがどうでしょうか。

ちょっと前から日本のテレビでは「日本が好きな外国人に日本を絶賛してもらう」というパターンの、いわゆる「日本SUGEEE!!!!番組」「日本礼賛番組」というのが流行っているそうで。YouTube で検索すると無断アップロードされたものがいくつか出てきますね……。

言うまでもないことですが、「外国にも日本や日本文化が大好きな人がいるよ」というだけの話であって、別に日本が特別に世界的な影響力を持っているというわけでは全然ないです。日本人にも「一流のバイオリン職人になるために、有名バイオリン工房が集まっているというイタリアの小さな街に単身で修業に来ました!」とか「フラメンコに魅せられて、プロのダンサーになるためにスペインに!」とか「チベット密教に出会って衝撃を受け…」とか、そういう人はたくさんいるじゃないですか。私も「ジュエリー職人の勉強をしている」という日本人留学生にエストニアでお会いしたことがあります。

そういった人たちと同じように、たとえば「時代物の日本映画が大好きだったんだけど、日本刀の美しさに魅了されてね。自分でも作ってみたいと思って、仕事を辞めて来日して刀鍛冶に弟子入りしたんだ。鉄は熱いうちに打てと言うからねHAHAHA!」みたいなアメリカ人がいたりするという。それだけの話なわけです。

てか、特に日本の中高年層の少なくない人たちが持っているっぽい「無根拠な(自己ならぬ)自国イメージの高さ」って何なんすかねこれ。少なくともヨーロッパでは日本はそんなに絶大な影響力ないですよ。

いまだに「日本の技術は世界一で、日本製家電が世界を席巻しているのだ!!」と思っている人も少なからずいそうな気がするんだけど、それは1990年代までの話です。こちらの大学生のメイン年齢層は二十代前半~半ばくらいですが、彼らはすでに「日本製家電が市場を席巻していた時代」を知りません、その時代には生まれていないので。日本の家電はヨーロッパではもうほとんど売ってないんですよ。とっくの昔にサムスンやLGに駆逐されてしまいました。タリンの家電販売店に置いてある日本製品プレイステーションと、あとはデジタルカメラレーザープリンターくらいです(※精度の高いレンズを作る技術はいまだに日本SUGEEEみたいです)。

日本は80年代くらいまでは実際にテクノロジー先進国だったので、まだそのイメージが固定されちゃっている人が結構いるんじゃないかと。家電に限らず「日本人は機械に強い! だからきっとコンピュータやインターネットにも強い!」とか思いこんじゃってる感じなんでしょうかね。

1年くらい前に「日本の学生のPCスキルが先進国で最低レベルだというデータが、衝撃を広げている」という記事 が話題になっていたようです。これについてはデータの信頼性に異を唱える意見もあるっぽいので真偽については保留しますけれど、多くの国がIT教育の向上にしのぎを削っているので「日本のIT教育は世界一!」ってことはまずないと思いますよ。

特に私が住んでいるエストニアはIT教育にかなり力を入れています。日本でもニュースになっていましたが、エストニアには一年生からプログラミングを教える小学校があるくらいのIT教育先進国です。人口130万ほどの小国なので、「教育レベルの高さ」「語学レベルの高さ」「ITの水準の高さ」などを武器にして国際競争に挑むという、そういう国家戦略を立ているみたいですね。

一方で、IT教育のレベルもそんなに高くないっぽくて、語学力に至っては先進国最低水準となってしまっているらしいニッポンですが、これからは「高等教育なんぞは一部のエリートだけに与えればよい」という方向に行こうとしているようですね。エストニアの大学進学率は8割に迫っており、さらに教育水準を向上させようと頑張っているというのに……。「日本SUGEEE!!!」って自画自賛している場合なんでしょうかね。いまグーグルで検索したら日本の一人当たりGDPが世界26位って記事が出てきたけどこれまじですか。もっと現実を直視した方がいい気がするんですけどね。

あとそんなに外国人に「日本SUGEEE!!!」って言ってもらいたいんなら、「実録・これが日本人の労働環境だ!!」みたいなドキュメンタリーでも作って反応を聞いてみたらいいんじゃないですかね。あとはワタミの新入社員教育ビデオを見せて感想を言ってもらうとか。「日本SUGEEE」の嵐になると思いますよきっと