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エストニア共和国より愛をこめて

北欧の小国に留学中の大学生が当地への留学や観光、社会生活についての情報などをお届けします

「高等教育は希望するすべての子どもに与えられるべきだ」と考えている人の割合は何%くらいだと思いますか?

社会

先日書いたこちらの記事について、けっこうな反響をいただいております。

www.from-estonia-with-love.net

「なんだヨーロッパの大学って無償だったり日本よりはるかに格安だったりするの? いいな~わたしも留学検討しようかな」

という感じでお役に立てていただけるのは大変うれしいのですが、わたしとしてはもういっちょ気づいていただきたいことがあってですね。それは、

「日本の大学の学費がここまで高額なこと自体が、そもそもおかしいのでは?」

「教育を受ける権利が保障されている国なのになんでこんな不平等が生まれているの?」

といったこと。しかしですね。「そうだこれは不平等だおかしいぞ!」「なんでヨーロッパで当たり前のことが日本ではできてないんだ!」と思っている日本人って、そんなに多くなさそうなんですよ。というか先進国としてはやばいレベルで少ないっぽいんです。

日本で「高等教育は希望するすべての子どもに与えられるべきだ」と考えている人の割合は何パーセントでしょうか?

グロテスクなデータを載っけておきますね。

格差や貧困の問題の研究で知られる社会学者・阿部彩氏の『子どもの貧困 日本の不公平を考える』(岩波書店)に、同氏による『児童必需品調査』(2008)から引用されているデータがあります。これは20歳以上の成人を対象にした調査で、衣食住や家族イベントなどの項目を上げて、

「希望するすべての子どもに絶対に与えられるべきである」
「与えられたほうが望ましいが、家の事情(金銭的など)で与えられなくてもしかたがない」
「与えられなくてもよい」
「わからない」

……のいずれかから選択してもらう、というものです。

例えば「朝ご飯」という項目だと、

希望するすべての子どもに絶対 91.8%
与えられなくてもしかたがない 6.8%
与えられなくてもよい 0.3%
わからない 1.1%

という結果となっています。さすがに朝ご飯を「与えられなくても仕方がない」という人は少ないようです(とはいえ7%はいるわけですが)。

これが「(希望すれば)短大・大学までの教育」という項目になると、どうなるかというとですね、

希望するすべての子どもに絶対 42.8%
与えられなくてもしかたがない 51.1%
与えられなくてもよい 4.2%
わからない 1.9%

ということで、このデータから推察するに、国民の半数以上が
「本人が希望するなら高等教育は与えられたほうが望ましいが、家の事情(金銭的など)で与えられなくてもしかたがない」
または、
「与えられなくてもよい」
と考えているということになりますね。すごい数字が出ちゃってるでしょ。日本人の大半が「高等教育の機会不平等は仕方がないことだ」と思ってるわけです。

というより、多くのひとはこれを「不平等」だと思ってないんじゃないかなあ。

「誰でも与えられた条件の中でやっていくしかないんだから、貧困家庭に生まれたせいで教育を受ける機会が制限されたとしても、それを社会のせいにするのは甘え

くらいは普通に言いそうですね。

実は日本政府は「高等教育無償化」を国際社会に約束しているんだが

ところでみなさん、日本が「国連人権規約の社会権規約第13条2(b)及び(c)の規定を最後の最後まで留保し続けた非発展途上国」だってご存じでした?

なんじゃそりゃ? といわれそうですが、これ、社会権規約の教育の保障についての項目のうち「中等・高等教育の無償化」についての条文なんです。「高等教育までの無償化をすすめることを国際社会に約束しますよ~」というこの項目を2008年まで留保していた国は条約を批准している160か国中わずか3か国しかなくて、それがルワンダマダガスカル、そして日本でした。その後まずルワンダが留保を撤回、ついに2か国となってしまったのですがついに2012年に日本政府も留保撤回を発表し、かろうじて「最後まで教育無償化を拒否した国」という汚名は免れることができたのでした。

てことで、実は日本政府って4年前に「高等教育までの無償化をやりますよ」と世界に宣言しちゃってるんです。しかしそれとまったく逆行するかのように教育ヘの公的補助を削減する方向に進んでいるという。わたしは無償化されるまで待てなかったからヨーロッパに来ちゃったけど、高等教育の機会を勝ち取るためにはこれしかなかったんですよ。だからあんまり責めないでくださいね。