エストニア共和国より愛をこめて

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアに暮らす大学生が、留学・観光・社会・市民生活などの話題を中心にさまざまな情報をお届けします。

NATO反対デモとタリン・マラソン

自己紹介にもあるとおり、わたしの大学での専攻は社会科学です。そしてこのブログの読者のみなさんの多くはご存じかと思いますが日本で過ごした最後の2年間は反人種差別の活動をしておりましたので、ヨーロッパに渡ってからもとうぜんこの地の政治系市民団体の動向に興味を持ち続けております。卒論のテーマもこの問題を扱おうかと思っているところです。

新学期の授業が開始されてさいしょの週末を迎えた今日、「タリン旧市街で市民団体のデモが開催されるらしい」という情報を得たため、さっそく現場に駆け付けることにしたのでした。

※注意 特に一般旅行者の方には、興味本位でこの種のデモに近づくことをお勧めしません。

今日のデモを主催したのは"Rodina"という、エストニアに居住するロシア系住民による保守系・正教系の市民団体です。"Rodina" はロシア語で「母国」という意味の単語で、この名前を持つ政党や政治団体はロシアを中心にほかにもいくつか存在するようです。


"RAHUMARSS"はエストニア語で「平和の行進」の意。ピースマークも描かれていますね。

 

「平和のための行進」と銘打たれているこのデモ。写真をごらんいただければおわかりのとおり、NATOへの反対がメインの主張の一つのようでした(青地に白い羅針盤NATOの紋章です)。とうの昔にワルシャワ条約機構が消滅し、ソビエト連邦が崩壊した現在も、NATOはロシアへの牽制を継続していることはご存じのとおりです。エストニアにはNATOサイバー防衛協力センターも設けられておりますが、これは2007年のロシアによるエストニアへの大規模サイバー攻撃がきっかけとなり設立されたもので、まさに新冷戦の防波堤です。また、とくに最近になってエストニア政府がロシアとの国境付近のNATO兵力の増強を求めており、エストニア―ロシア関係はますます緊張状態にあります。なので、主催であるロシア系住民の視点としては「NATOの武力増大に反対する」という趣旨の「反戦・平和を求めるデモ」ということになるわけですね。

Rodinaについてはよく知らなかったのですが、デモで掲げられたプラカードの様子からいうと「エストニアに住むロシア住民として、エストニアとロシアの融和を希望する」というスタンスのようで、デモには「反エストニア」的な要素はまったく感じられないどころか、写真のとおりエストニア国旗の配色を現した三色の風船が浮かんでいました。デモは旧市街の広場を経由したあと、トームペア場内にある国会議事堂(隣は正教会の大聖堂)の前庭で集会が開かれていました。集会はエストニア語とロシア語で演説が行われていましたが、どちらの言葉も解さないわたしはここで離脱。

 


その趣旨のとおり平和なデモ行進だったのですが、エストニアにおいてはマイノリティである保守派のロシア系住民による、政府の防衛政策路線に異議を唱える政治行動ですから、やはりエストニア―ロシア両国、そしてエストニア人と残留ロシア系市民との摩擦というのは、まだまだ微妙な問題なのだなあということを思わずにはいられませんでした。

なお、デモ当日はエストニアにおける最大のスポーツイベントのひとつであるタリン・マラソンの2日目でした。マラソンのスタート/ゴール地点も旧市街の入り口にある自由広場で、一部でマラソンコースの沿道をデモ隊が通過するという場面もありました。

  


当ブログではたまにこのようなシリアスな問題もお届けするつもりですので、よろしくお願いしますね。