エストニア共和国より愛をこめて

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアに暮らす大学生が、留学・観光・社会・市民生活などの話題を中心にさまざまな情報をお届けします。

どうして在特会や日本会議が社会運動として"成功"したのか

泥憲和さんが亡くなられた

元自衛官で、護憲運動やヘイトスピーチへの抗議活動に尽力されてきた泥憲和さんが、5月3日に世を去りました。

www.huffingtonpost.jp

泥さんと実際にお会いしたのはただ1度だけです。2014年の新宿のネイキッドロフトでのイベントで、ほんの少しお話をしたのが最初で最後でした。

日本国憲法の発布から70年目の日の朝を迎えるのを見届けてから旅立つなんて、本当に最期の最期まで泥さんは泥さんだなあと……。

在特会が運動として"成功"した理由

泥憲和さんといえば、やはり「在特会などのレイシスト集団に対しての抗議行動へのパイオニアのひとり」であることは忘れらせません。

この動画は2010年のものですが、当時の在特会やその周辺団体などのレイシスト連中って、もうまったく我が物顔でヘイトスピーチを撒き散らしていたんですよ。

いまでこそ在特会一味がデモをやろうとすれば反差別を訴える市民が取り囲んでやつらは何もできませんが、数年前まではそうではなくって、もう連中のやりたい放題だったんですよ。

在特会って、社会運動としては「ただのネトウヨ集団のくせにかなりの成功を収めた団体」だと言えると思うんですよね(もちろん"悪い意味で"ですよ)。「あいつら馬鹿だな~」とか笑っていられる限度をはるかに超えて、実際に社会に不安を与える団体に成長したわけでしょう。安倍総理でさえ国会で「ヘイトスピーチは極めて残念」と答弁せざるを得なくなり、韓国政府からは「日本政府はあいつらをなんとかしろ」と注文を付けられ、国連からは「いいかげん法整備をやれよ」と勧告を受け、2016年にヘイトスピーチ規制法が成立するまでに至りました。

この差別集団一味、現在は「日本第一党」などという政治団体を作って世界的な排外主義の潮流――トランプ、ルペン、ウィルダースらの躍進――にあやかろうと画策しているようですが、「選挙に出てもどうせ泡沫候補だろ」と笑っているだけじゃちょっと済まされないと思うんですよね。日本に住む外国籍の人たち、その他の民族的マイノリティの人たちにとっては、この手の連中が世の中を闊歩するなんて十分に脅威でしょ? ネトウヨ集団が社会的にはいくら極端な少数派とはいっても。

特にゼロ年代後半において、在特会やあのへんの行動するネトウヨ連中って、時間も金も使ってそれなりに頑張ったんですよ。彼らがどんなことをやってきたかご存じですか?

  • どれだけ一般人から白い目で見られようが、雨の日も風の日も、駅前での街宣・繁華街でのデモ行進・ビラ撒きを何年も何年も続けた。
  • 団体を結成し、毎年1000万円を超える資金を全国の支援者から集めた。
  • 地方政界に食い込むため、地方議員にマメに会ってコネクションを築いた(地方議会選挙に在特会周辺から候補者を出したりなども)。
  • 「ニコニコ生放送」などのインターネットのツールを駆使して、自分たちの主張を広めようと努力した。
  • 支持してくれる出版社を見つけ、自身らの主張を書籍という形で世に出した。

さらに最近の動向にとしては、

  • リーダーを東京都知事選挙に擁立し、そこそこの得票数を得た。
  • 自分たちで政党を結成し、本格的に政界への進出を計画し始めた。

どうでしょうか。

いくら荒唐無稽な主張を繰り広げるおバカなネトウヨ集団であったとしても、これだけ丹念な社会運動を何年も継続してやってれば、そりゃそれなりに世の中動かしますよね?

「社会運動」に限った話ではなくて、やっぱり「地味だけれども着実な努力を重ねている人は、最終的にはそれなりの成果を実らせる」っていう経験則があると思うんですよね。

いくら地味でダサかろうが、着実な筋力トレーニングを毎日欠かさず続けていれば誰でもそれなりにマッチョになるだろうし、ひたすら地道に英語のリスニングとスピーキングを続けていれば、誰でも数年後にはそれなりに英語話せるようになりますわな。

同様に、いくらむちゃくちゃな主張のネトウヨであろうと、毎週毎週デモや街宣を愚直にやり、何年も飽きずにインターネットでデマを拡散してれば、やっぱりそれなりに力を持っちゃうんですよ。そういう意味では在特会は本当に"真面目な努力家の集団"であって、だからこそ、差別のターゲットになる人たちにとってはいまだに脅威なのです。

地道な運動はなんだかんだ言って力を持つのでは

実はこれはわたしのオリジナルな意見ではなくて、かつてわたしが社会運動をともに行っていた(だいぶ前に袂を分かっておりますが)菅野完さんの受け売りですね、半分くらいは。

『日本会議の研究』の著者として知られる菅野さんは、最近は例の森友学園問題の追及でご活躍のようですが、かつては在特会らへの抗議行動に傾注しておりました。そのときに菅野さんの発言をわたしはいまでも覚えているんですよね。

「在特会一味の多摩川ってやつ、あいつは本当に偉い。あんなやつがもっとたくさんいたら、世の中変わるわ」

"多摩川"というのは、かつて在特会界隈で活動していた自営業者の中年男性なんですけれども、この人はどこにでも自作の巨大なプラカードを持って駆けつけるんですよね。在特会系のデモや街宣、東京都知事選に出馬した際の田母神の応援とか……とにかく極右系が動いている現場にはこの人がほとんど必ずいて、視認性抜群の巨大プラカードを掲げてめちゃめちゃ目立っていました。

さらにこの"多摩川"氏は英語にも堪能で、自身のネトウヨ主張をインターネットを通じて英文でも世界に向けて発信していたんですよね。誰が読んでるんだか知りませんが。

ネトウヨだろうがなんだろうが、「地道なことをひたすら愚直にこなす奴」って、やっぱりそれなりに力を持っちゃうんですよ。念のため言っておくと、「体育会的な根性論」みたいなものとは正反対ですよ? ウサギ跳びや千本ノックではなくて、「地味だけれども科学的で着実な体力づくり」が最終的には功を奏する、みたいなことです。

菅野さんが発表されたものを読むと、いまの「日本会議」がどうして政権に食い込むほどのポジションを掌握できたのかが想像できます。菅野さんによると、日本会議は闇の組織でも日本社会を裏でコントロールする団体でもなんでもなくて、とにかく地道に地道に社会運動をやってきたおじさん集団に過ぎないんだそうですよ(日本に根強く残存する男尊女卑、子どもの人権軽視なんかを利用しながら)。話題の森友学園の理事長も、そういうタイプの人なんでしょう。やっぱり「地味で着実に努力を続ける人たち」って、なんだかんだ言って力を手に入れるものなんじゃないですかね、いくら馬鹿なネトウヨや極右であろうとも。

最期まで地道な活動を続けていた泥さん

これは日本を離れてもうすぐ2年になるわたしより、日本のリベラル派のみなさんのほうがご存じだと思うんですが、泥さんは世を去る前の最後の最期まで、地道で着実な社会運動を続けていました。各地の護憲集会に駆けつけ、体調の許す限り講演を行い、Facebook や Twitter で発信を続けていました。「自分を高みに置いて、いまの日本社会を上から眺めてはため息をついてばかりみせる人たち」とは対極にあることをやっていたわけですね。

ネトウヨ連中なんか「社会を客観的に観察して批評する」なんて発想は毛頭なくって、臆することなく自分たちの愚かな思想を草の根的に拡散してますから強いですよねえ。頭のなかで理屈をこねくり回すのではなく、まずは手を動かして(キーボードをたたいて)ネットで社会を扇動だ、それでも足りないから街頭に出て活動しよう、自分たちに都合のいいことを言ってくれるメディアを熱烈に応援しよう……などといった極めて生産的な努力をする奴らなわけです。インターネットが社会運動のツールとして使用されるようになって久しいですけれど、はっきり言って「インターネットの使い方」に関しては、リベラル勢よりも極右やネトウヨのほうが上なんじゃないですかね?

(ま、連中はデマだろうが捏造だろうが平気でネット上で拡散をして恥じないので、ルール違反を一切気にしないぶん最初から大幅に"有利"ではあるんですが)

でも、そんなルール無視のネトウヨ集団だからこそ、実際に被害に遭うマイノリティ層にとっても脅威なんですよ。

上に紹介した動画にあるように、かつては「こんな馬鹿な人たち相手にするだけ無駄でしょ? 放っておけばいいんじゃない?」と長年にわたり見逃されてきた在特会連中に立ち向かって説教した泥さんの姿にこそ、わたしたちは学ぶことがあるんじゃないでしょうか。

安倍首相から「日本」を取り戻せ! !

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