エストニア共和国より愛をこめて

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアに暮らす大学生が、留学・観光・社会・市民生活などの話題を中心にさまざまな情報をお届けします。

「電子政府の実現によってエストニアから会計士が消滅した」というのは嘘


日本の経済誌に寄稿しました

ごぶさたしております。5泊6日のサンクトペテルブルク旅行からさきほど帰ってきました。詳しくは後日の記事でたっぷり語りたいと思いますのでしばしお待ちを。

さて、わたしがエストニアに帰国した11月20日に日本で発売された「週刊エコノミスト」最新号に、わたしが寄稿した「エストニア『会計士が消滅』のうそ」という記事が掲載されています。

週刊エコノミスト 2017年11月28日号 [雑誌]

週刊エコノミスト 2017年11月28日号 [雑誌]

 

先月末くらいに編集部からわたしに問い合わせがありましてね。その内容というのが、

「エストニアでは行政機能の電子化によって税理士や会計士が不要になり、それらの職業が消滅してしまったという話を聞いたのですが、本当でしょうか?」

というものでした。

いやー、これ以前からネット上でよく見かける誤解なんですよねー。エストニアには日本の「税理士」に相当する資格はないのですが、「会計士」については電子政府の導入以降も従来通り存在しています

なので、

「いや、それは嘘が流布しちゃっているだけですねー。街中にはいくつも会計事務所がありますし、大学で会計学を専攻する学生も多いですし」

とお返事したんですが、ではそれを説明する原稿を書いてくれませんか、ということになって今回の寄稿をする運びとなったのでした。

「え、じゃあ電子化以降もエストニアの会計士は失業してないの?? まだ会計士の仕事は存在するってこと??」

などと気になる方がいらっしゃると思いますが、詳しくは記事に書いておりますのでぜひご一読ください。

週刊エコノミスト 2017年11月28日号 [雑誌]

誤解の発端は大前研一氏か?

おそらくこの誤解の発端となったのは大前研一氏によるこちらの記事ではないかと思います。

www.news-postseven.com

国民IDのチップを格納したSIMカード入りのスマートフォンからも、eガバメントポータルへのログインや電子文書への署名も可能になっている。スマホさえあれば、住民登録から年金や保険の手続き、納税などが簡単にできてしまうのだ。このためエストニアでは税理士や会計士が不要になり、それらの職業は消滅したのである。(強調筆者)

引用元:エストニアの電子政府実現で税理士や会計士の職は消滅した│NEWSポストセブン

と、大前さんはここで「それらの職業は消滅したのである」と言い切っちゃってますねえ。おまけにこの部分が拾われて記事タイトルになっています。

さらにこの記事をソースにした「エストニアからは会計士が消滅した」というページがネット上にはザクザク見つかりました。日本からは遠い小国の話ですから、誰も「これ間違いですよ」と突っ込まないまま、現在まで拡散し続けているということでしょうか。

もちろん大前さんのちょっとした勘違いだったのだと思うんですが、著名な経営コンサルタントのコラムが大手のニュース系ポータルサイトに掲載されるとこのくらいの影響力を持っちゃうんですねえ。

少し見方を変えると、これってウェブニュースの信憑性の問題でもあるかなと思うんですよね。「そこそこ大手のウェブニュースでも、ファクトチェックをまともにやっていない場合がある」ってことなわけですから。

たとえば google で「estonia accountant」というキーワードで検索してみると、こんな感じになります。「エストニアからは会計士が消滅した」なんて一発で嘘だってわかるじゃないですか。

estonia accountant - Google 検索

特にエストニアのような日本人にあまり馴染みのない小さな国の場合、いいかげんな情報が流布してしまっても現地にいる人以外は正誤の判断がつかないことも多いかと多います。自分で情報を検索して調べてみることが大事だと思います。