エストニア共和国より愛をこめて

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアに暮らす大学生が、留学・観光・社会・市民生活などの話題を中心にさまざまな情報をお届けします。

アパホテルの炎上事件ってだいぶ国益を損なっていると思うけどいいの?

極右ホテルグループが大炎上

 

カルト極右の経営者夫妻が代表を務めていることで知られるアパホテルですが、客室に南京事件を否定する内容が含まれたヤバイ本を置いていることが中国のインターネットユーザーにバレて盛大に炎上中とのことです。新年早々元気がいいですねー。

アパグループニュースリリースによると、「撤去の予定なし。こんなのは言論の自由だ。圧力に負けないゾ!」と徹底抗戦の構えのようです。「ご不快に思われたようでしたら申し訳ありません。お詫びします」とか言って反省してもいないのにとりあえず謝っちゃう手合に比べたらよっぽど堂々としてますよねー。さすが極右。

いやー、今回の件は気持ちいいくらいにパーフェクトな WIN - WIN に見えますよね。

 

アパホテル 経営者夫妻の思想・主張を全世界に拡散できて大喜び

中国人旅行者 これからは気持ち悪いウヨホテルを避けられて安堵

ネトウヨ 中国人旅行者を少しでも排斥できて嬉しい

一般市民 改めて変なウヨホテルだということが周知されたため、うっかり宿泊してしまう人も減ってラッキー

 

一見だれも困っていない、というよりむしろ全員が得しているように見えて、「アパホテルが炎上してくれてよかったねー^^」という話で終わりそうです。

 

日本のみなさんが気になる「海外からの反応」は?

 

でもね、この事件って英語メディアでもがんがん報じられていますよ?

 

www.bbc.com

 

www.theguardian.com

 

日本のニュースだと「中国で騒ぎになりました。中国政府も反応しています。日本政府も菅官房長官がこうコメントしました」みたいな起こったことの羅列しかしていないけど、欧米のニュース記事だともっと踏み込んだ解説が加えられています。たとえば後者のザ・ガーディアンだと、

 

Last October, Japan withheld more than £34m in Unesco funding after the UN cultural and scientific body registered disputed Chinese documents related to the massacre in its Memory of the World list.

Japan made the payments in December after Unesco said it would review the screening process for registering documents.

 

出典:Japan hotel chain angers China over book's denial of Nanjing massacre | World news | The Guardian

 

昨年10月、国連教育科学文化機関が、論争となっている南京事件に関する資料を世界記憶遺産に登録した際、日本は3400万ポンド超のユネスコへの拠出金について支払いを撤回した。

ユネスコが資料の登録についての審査過程を見直すと発表したのち、12月になって日本は支払いに応じた。

 

(筆者訳)

 

と、昨年日本がユネスコに対して札束を背景に圧力をかけた件が付け加えられています。これ、先日の慰安婦像の問題と合わせて、「やっぱり日本は過去の戦争責任について認めたがらないんだなあ」「侵略を正当化したり歴史を修正したりする動きがあるんだなあ」ということが世界に印象づけられそうな流れなんですが、大丈夫ですか?

日本では「はぁ? 歴史修正主義発言も言論の自由でしょ? 何が問題なの?」という感じで受け止められているのではないかと思いますが、残念ながらヨーロッパだとそうは受け取ってもらえないかもしれないんですよねー

2016年に日本でもヘイトスピーチ対策法が成立しましたが、その際の報道で「ヨーロッパではヘイトスピーチが禁止されていますが……」という文句がよく登場したはずです。ヨーロッパってわりと表現規制が多くて、ヘイトスピーチのような差別感情に基づいて民衆を煽動する目的の言論については厳しめに制限されています歴史修正主義発言も規制の対象になる場合があって、こちらをご覧いただければおわかりのとおり、特にホロコーストの否定については法律で禁止している国が多くあります

 

オリンピックに向けた法整備もいろいろ無駄になるかもね

 

東京オリンピックの開催が近づいているということで(あんなもの本当に開催までこぎつけられるのかどうか知らんが)、いまのウヨ政権もそれなりに海外からの目を気にしているっぽいんですよねえ。2008年の北京や2014年のソチの経験からもおわかりのとおり、オリンピック開催国の人権状況ってイヤでも注目を集めてしまいますからねえ。昨年はヘイトスピーチ対策法や部落差別解消法案が成立していますし、LGBTの人権や労働者の権利などもちょっと見直すかもね、みたいなことを政権が言い始めています。

でもせっかく法整備を頑張っても、今回みたいな、日本による「戦争責任の否定」とか「侵略正当化」が世界に印象づけられる事件が今後も続いて起こっちゃったりすると、「なんだやっぱり日本は人権後進国か。しょうがない国だなー」って感じで、日本の国際的評判がいっそう低下しちゃいそうなんですけど、それはいいのかな?

ま、さきほど説明したような歴史修正発言を禁止したり抑制したりする法律は日本には存在しませんから、キモウヨホテルもこのままどうぞ好きな本を置き続ければいいと思いますよ。どんな本を置こうがそれは言論の自由なわけですから。安倍サンもここは「アパホテルの本には正しいことが書かれていると思いますが……」とかうっかり本心を言っちゃってさらに国際的に大炎上させてくれたりすると面白いんですけどね。そのかわり日本国としては結構な代償を払うことになりそうですが……。