エストニア共和国より愛をこめて

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアに暮らす大学生が、留学・観光・社会・市民生活などの話題を中心にさまざまな情報をお届けします。

エストニアがどんな国なのかわかりやすく解説してみた

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エストニアとはどんな国なのか

このブログを開始して以来、筆者にもいろいろな意見が寄せられるんですが、

「エストニア? そんな国きいたことがないんだけど?」
「エストニアって確か社会主義国でしょ?」

みたいな声もあったりします。

(さすがに『エストニアなんて国は知らない』という方は社会の授業をサボっていただけではないかと思いますが……)

逆に「エストニア」という国名にビビッとすぐ反応してくれるのは、IT関連の産業に従事している人や起業家の人たちです。

今回の記事は、「エストニアなんて国はきいたことがない」という方にも「知ってるよ電子政府の国でしょ?」という方にもお役立ていただけるように、「エストニアとはどんな国なのか」を簡潔に解説してみました。

エストニア共和国の概要

人口:約131万人(2016年1月)

面積:4.5万平方キロメートル(日本の約9分の1)

首都:タリン

国家元首:ケルスティ・カリユライド大統領(エストニア史上初の女性大統領)
※ただし大統領は儀礼的・象徴的な役目のみ。行政の長は首相のユリ・ラタス。

歴史:
1918年 帝政ロシアより独立。
1940年 ソビエト連邦に併合されエストニア・ソビエト社会主義共和国となる。
1991年 ソビエト連邦からの独立を回復
2004年 NATO 加盟、EU 加盟
2011年 ユーロ導入

参考:エストニア基礎データ | 外務省

先鋭的な新自由主義経済

エストニアは四半世紀前までソビエト連邦の一部だった国でありながら、現在はバリバリの新自由主義国家です。

  • 低福祉・低負担
  • 政府が市場に介入することはほとんどない
  • 新しい産業の誘致に非常に積極的

という「小さな政府」路線を歩んでいます。北欧地域に位置すると言っても、ノルディック諸国とは福祉・経済政策がまったく違いますね。エストニアのことを「北欧のシンガポール」と形容する人もいます。以降で少し詳しく見ていきましょうか。

超シンプルな税制

エストニアには累進課税という制度はありません。所得税率は所得にかかわらず一律20パーセント(2017年現在)となっており、高所得者を優遇する税制をとっているといえるでしょう。なお年間所得が2160ユーロを下回る場合には課税対象にならないようです(同)。

消費税の税率は20パーセントとなっており、日本よりずっと高額です。ヨーロッパ諸国はこの程度の消費税率は当たり前なのですが、特筆すべきはエストニアの場合は食料品や衣料品などの生活必需品にも同じ税率が適用されていることです。例外的に書籍や雑誌、医薬品、衛生用品、宿泊施設の利用費などに課される消費税率は9パーセントとなっています。

参考:Tax rates | Estonian Tax and Customs Board

世界で6番目の自由経済

ノルディック諸国がコーポラティズムに基づいた政策を行っているのとは対象的に、エストニアは政府が市場にほとんど介入しない自由放任主義をとっています。以下の記事では「香港、シンガポール、ニュージーランド、スイス、オーストラリアに次ぎ、エストニアは世界で6番目の自由経済の国」と紹介されています。

Estonia sixth in the world by economic freedom, second in Europe - Estonian World

規制の少なさ、低い税率、教育水準の高さなどの好条件を武器に、国ぐるみで新産業の誘致に熱烈に力を入れています。

www.fastgrow.jp

世界最先端の電子政府

エストニアは世界で最も進んだ電子政府を擁しています。国民に "isikukood" というIDが割り振られ、さらに15歳以上の国民はこのIDの情報が記録されたIDカードを所有することが義務付けられています。

日本人のみなさんのお財布には「運転免許証」「健康保険証」「銀行のカード」「病院の診察券」「電車の定期券」などが入っていると思いますが、エストニアの場合は1枚のカードですべて間に合ってしまいます。

あらゆる個人情報が国民IDに紐づけられているため、行政手続が日本に比べてはるかに簡略かつ低コストで行われています。

関連記事:「え、日本ってまだ紙使ってるの?」エストニアのペーパーレス社会

世界でも屈指の教育水準の高さ

エストニアは国土の小ささや人口の少なさを補うために、教育の拡充に非常に力を入れています。PISA の調査結果では「数学的リテラシー」が参加国中9位(日本5位)、「読解力」6位(同8位)、「科学的リテラシー」3位(同2位)と、エストニアの教育がかなり高い水準にあることがうかがえます。

参考:http://www.oecd.org/pisa/

国民の多くが英語を話す

特に30代以下のソビエト崩壊後に教育を受けた世代は、ほとんどが流暢に英語を話せます(『会話ができる程度』にとどまるわけではなくて、TV番組や映画をごく当たり前に英語で視聴できるレベルです)。少なくとも首都タリンにおいては、エストニア語がまったく話せなくても問題なく生活できてしまいます。

国民の最大の関心事は「対ロシア関係」

国境を接する隣国で旧支配国のロシアとの関係は、常にエストニア国民の関心事です。特に親ロシア的な姿勢が見え隠れするドナルド・トランプのアメリカ大統領就任後は、改めてロシアの動向への警戒が高まっています。エストニアはEU、そしてNATO圏の東端であり、いわゆる「新冷戦」において緊張を強いられるポジションに立たされています。

www.huffingtonpost.jp

残留ロシア系住民との緊張

エストニアの人口のうち4分の1ほどがロシア系の住民です。ロシア系住民のうち特にエストニア語を話せない人たちは職業に就きづらく、エストニア人との経済格差を生んでいます。

経済格差を背景に、民族的アイディンティティーの問題が引き金となり、10年前の2007にはロシア系住民による暴動(青銅の夜)が発生しています(ただしこれ以来大きな衝突は発生していません)。

www.youtube.com

 

いかがでしたでしょうか。エストニアは現在急成長中の新興国ですから、まだまだ経済的成熟への途上にある国です。そのぶん新しい技術を取り入れることに積極的で、社会に活気があってエキサイティングに感じます。