エストニア共和国より愛をこめて

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアに暮らす大学生が、留学・観光・社会・市民生活などの話題を中心にさまざまな情報をお届けします。

貧困層は子どもを持てない日本、経済力に関係なく子持ち率の高いエストニア


日本は「経済力によって子どもを持てるかどうかが左右されてしまう」国

さいきん周りで結婚したり子どもが生まれたりという話をよく聞くんですよね。日本の友達のことではなくて、エストニアで知り合った、主に大学での友人たちの話です。

「学生結婚をして子どもが生まれたのでしばらく子育てのために休学しまーす」みたいな子もいたりします。休学中にもインスタグラムにお子さんの写真をたびたび載せていて、赤ちゃんが元気に成長している様子をSNSを介して紹介してくれていて微笑ましいです。

そんなところにちょっと気になる記事がツイッターで流れてきました。

教育社会学者の舞田敏彦氏がブログに発表した「年収と子あり率の関連」というポストなのですが、ちょっとご覧になってみてくださいな。

tmaita77.blogspot.com.ee

舞田氏のデータ分析から導かれる結論としては、

「日本の場合、貧困層が子どもを持つことが非常に厳しい」

ということですよね。収入によって子どもを持てるかどうかが決まってしまう傾向が、世界的に見ても顕著というわけですね。

エストニアは「貧しくても子どもを持つことができる国」?

日本と同じく社会保障が貧弱で、しかも経済規模が日本よりはるかに小さいエストニアですが、面白いことに日本とは全然ちがう傾向が出ていますね。舞田氏作成の表によると、エストニアは「経済力による子あり率の格差が極めて小さい国」、そしておそらく「貧しくても子どもを持つことができる国」ということが言えそうです。

f:id:kinotoshiki:20171230085440p:plain

(舞田, 2017)

注:赤丸によるマーキングは引用者によるもの

舞田氏はリトアニアやスロベニアといった旧共産国の階層格差の少なさについて、

リトアニアやスロベニアでは,階層格差がほとんどないですね。後者では,リッチよりプアが高いくらいです。国民皆平等の共産主義の名残りでしょうか。(舞田, 2017)

としていますが、エストニアの階層格差の低さはこの例にはあてはまらなさそうです。ソビエト連邦時代に経験した経済的な不自由さへの反動か、現在のエストニアは先鋭的な新自由主義政策を採用しています。「所得税に累進課税が存在しない(何億円稼いでも税率は一定!)」「消費税率は食料品や衣料品も含めて一律20パーセント(※書籍などごく一部の例外あり)」というはっきりと富裕層を優遇する税制ですし、社会保障についてもアングロサクソン型の「低福祉・低負担」です。

ではなぜ貧弱な社会保障にもかかわらずエストニアでは低所得層でも子ども持つ率が高いのでしょうか。いくつかの可能性が考えられると思います。

1. 学費が原則無料だから

舞田氏は、日本の貧困層が子どもを持ちづらい理由として、

…日本の教育費はバカ高。前回記事の試算によると,標準コースでも,子を大学まで出すのにかかる費用は1000万円超えです。子を持てるかどうかが,経済力とリンクするのは当然です。(舞田, 2017)

としていますが、エストニアはこの点はクリアなんですよ。原則として高等教育まで学費が無料だからです(私立学校を除く)。

エストニアのIT先進国ぶりは日本でもかなり知られていると思いますが、経済規模や国土の小ささといったハンデを克服するために、エストニアは教育に非常に力を入れている国なので、新自由主義の国といえども教育については原則無料なんです。

私費留学生であるわたしですら大学入学から卒業までに支払う学費は全額で9000ユーロ(約120万円)のみです。現地学生は原則無料ですから、日本のように「子どもを大学に入れるためには何百万円も貯金をしないといけないし…」みたいなことを考える必要がないってことです。

2. 国の経済的な見通しが明るいから

日本では「失われた20年」がそろそろ30年くらいになりそうですね。バブル経済の崩壊以降、ひたすらひたすら経済の停滞が続いていて、将来に不安を抱える若者や中年は多いと思います。

一方、エストニアはソビエト連邦から独立し資本主義経済へ転換したあと、急激な経済成長を経験しています(参考:バルトの虎 - Wikipedia)。

「ものごころがついた頃から、とにかくどんどん国が豊かになっていく」という経験をいまの20~30代はしているんですよね。日本の同じ世代が「ひたすら国が貧しくなっていく」ことを体験しているのとは対照的です。

もちろん10年前の世界金融危機はエストニア経済にも大打撃を与えたのですが、それを克服した後はふたたび経済的な安定は続いています。以前の記事で紹介したように、エストニア中央銀行が「10~15年後にはエストニアの生活水準はフィンランドの85パーセント程度に達するだろう」という予測を発表しています。

www.from-estonia-with-love.net

なんども繰り返すようにエストニアの社会保障は全体的に貧弱なのですが、国の経済的な未来については明るい予測をしている人が多そうです。この点が経済力にかかわらず子どもを持つ人が多いことに関係しているのではないでしょうか。

結論

ということで。結論としては「日本も学費を無償化し、さらにもっと経済を成長させて将来に明るい見通しを立てられるようになれば、経済力にかかわらず子どもを持つことができる社会になるんじゃないかな」ということになると思うんですけれどね。どうでしょうか。

<引用元>

舞田敏彦 (2017, December 27). 年収と子あり率の関連. Retrieved December 29, 2017, from http://tmaita77.blogspot.com.ee/2017/12/blog-post_27.html