エストニア共和国より愛をこめて

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアに暮らす大学生が、留学・観光・社会・市民生活などの話題を中心にさまざまな情報をお届けします。

日本人は「自国が平等な国である」と信じる傾向があるっぽい


 

なぜ日本人は「貧困」に無関心なのか

toyokeizai.net

つい先ほどツイッターで流れているのを見つけた記事です。

阿部彩さんといえば当ブログの過去記事でも『子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)』という著書を紹介したことがあります。

記事中で注目せざるを得なかったのはこの部分。

たとえば、多くの先進諸国では、家計の中で非常に住宅費が高い人たちに対しては、政府からお金が出る、家賃補助が出る。この話、みんな知らないんですよ。「この事実を聞いて、どう思います?」と問われたときに、「へえ、そうなんだ。外国はすごいなあ」だけで終わらないで、「ならば、日本もやるべきよね。そうであってもおかしくないよ」っていうふうに話が進んでほしいんですよ。だけど、そういった話になかなかならない

引用元: 貧困を救う手立てがあまりに弱い日本の現実 | 国内経済 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

(※太字による強調筆者)

これ、わたしもずっと思っていることなんですよね。基本的に日本の人たちって貧困について無関心だと感じます。というか、そもそもほとんどの人は外国の社会福祉制度のことなんか知らないので、日本の福祉が貧弱であること自体に気づいていない場合が多いんじゃないかと。

かといって、その点を指摘すると「日本を馬鹿にしているのか!」みたいな反応をする人がいるんですよね。

わたしがこのブログで「ヨーロッパの社会福祉制度はこんなですよ~」なんて紹介したりすると、ウヨい人たちがわざわざ、

「日本をわざわざヨーロッパと比べる必要はない!! よそはよそ、うちはうち!!」

みたいなコメントを鼻息荒く送りつけてきたりします。

同様のパターンとして、ツイッターの駐日デンマーク大使館のアカウントが自国の福祉制度を宣伝するたびに、ネトウヨが湧いてきて「日本を貶めている!!」とか変なコメントをつけてたりするのを見かけますよね。あれはちょっと面白いけど(笑)

「社会的不平等」についての国際調査の結果を分析してみた

タイムリーなことに、現在わけあって ISSP 2009 "Social Inequality IV" という、国際的な機関がまとめた社会的不平等についての大規模調査の分析をやっていたところでした。これがけっこう興味深いんですよ。

10年近く前の2009年にまとめられたちょっと古い調査です。ちょうど世界が経済危機に見舞われていた頃に収集されたデータですね。日本も小泉・竹中の構造改革後にあらわれた「格差社会」が深刻な問題になっていた時代です。

これを分析してみて実に面白いなあと思ったのが、

「どうやら、日本人は他の国の人たちにくらべて『自国は平等な国である』と信じる傾向があるっぽい」

ってことなんですよね。

どういう結果が出ているのか説明しましょう。

調査項目のなかに、

「成功するためには、良い教育を受けた親を持つことは重要だと思いますか?」
「裕福な家に生まれることは重要だと思いますか?」
「お金持ちの家に生まれた子だけが大学に行けると思いますか?」
「よい高校を出た子だけが大学に行けると思いますか?」

などといった、不平等をもたらす要因のうち本人の責任に帰すことができない外的要因(文化資本とか経済的資本とか社会関係資本とか)に関連する質問が含まれています。結果を国ごとに比較してみると、日本の人々は他の国の人たちに比べて、

「このような外的な要因は、それほど重要ではない(=機会の平等が保障された国である)」

と考える傾向があるみたいなんですよ。

ためしにわたしの住むエストニアと比べるとこんな感じになります。

(※以下のグラフはいずれも ISSP 2009 "Social Inequality IV" をもとに筆者作成)

教養のある両親を持つことは重要ですか?

※Essential(絶対に欠かせない)~ Not important at all(まったく重要ではない)の5段階評価・以下のグラフも同様

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裕福な家庭の出身であることは重要ですか?

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裕福な人だけが大学の学費を払うことができると思いますか?

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よい高校の生徒だけが大学で教育を受ける機会があると思いますか?

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 面白いことに、学費が高額で国家からの教育予算の支出も少ない日本のほうが、

「わが国においては、家が裕福かどうか・親が高学歴かどうかなどは、将来の成功においてあまり重要ではない」

と考える人の割合が多いんです。フィンランドやスウェーデンのような、学費が無償で補助がたっぷり受けられる福祉国家に近いような数字が出ています。実態以上に自国が「平等に機会が与えられる国である」と信じられているみたいなんですよね。「貧困」への無関心や、社会保障制度の拡大に否定的な傾向はこういった意識と関連しているんじゃないでしょうか。

しかし世界でも屈指の高額な高等教育制度の国なのに、3割の人が「裕福な人だけが大学の学費を払えるとは思わない」と答えているのは興味深いですね…。こりゃ学費無償化にも消極的なわけだ。

2年ほど前に、NHKニュースに登場して「子どもの貧困を無くしたい!」と訴えた高校生をネット民総出で袋叩きにした事件がありましたが、そういうのも「日本が平等な国であるという幻想」が背後にあるんじゃないでしょうかねえ…。