エストニア共和国より愛をこめて

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BBC日本語版が高須センセイに「配慮」されていらっしゃるっぽい件


BBC日本語版の報道が本家と大幅に違うという事実 

前回に引き続いて「昭和天皇独白録」関連の記事です。

<前回の記事>

www.from-estonia-with-love.net

高須クリニック院長による「昭和天皇独白録」原本の落札は国際的なニュースになりましたが、日本と海外では報道のニュアンスがずいぶん違います。

BBCの日本語版ではこのように報道されています。

www.bbc.com

記事の冒頭部分を引用してみます。

昭和天皇が第2次世界大戦前と戦中の出来事について側近に語った回想録の原本が6日、ニューヨークで行われた競売で22万ドル(約2470万円)で落札された。落札者は美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長。

「昭和天皇独白録」と呼ばれる回想録は、戦後に米国の要請を受けてまとめられたと考えられている。手書きの記録は、「現人神」とあがめられていた天皇の個人的な戦争責任を回避するため、慎重に書かれたとみられる。

引用元:「昭和天皇独白録」原本が2500万円で落札 ニューヨーク競売で - BBCニュース

記事には本家である英語版へのリンクが張られていますが、元になった記事のタイトルは "Hirohito's WW2 memoir bought by Japanese accused holocaust denier" (ヒロヒトの第二次大戦回顧録、ホロコースト否認者として非難されている日本人が購入)となっています。

同じく冒頭部分を引いてみますね。

A memoir by former Japanese Emperor Hirohito about World War Two has been bought by a Japanese surgeon accused of denying the Holocaust and the Nanjing massacre.

Known as the Emperor's Monologue, the memoir chronicles the slide into war until Japan's surrender in August 1945.Dr Katsuya Takasu paid $275,000 (£205,000) at an auction in New York.He has described Auschwitz as a "fabrication" but says he is against Nazism.

引用元:Hirohito's WW2 memoir bought by Japanese accused holocaust denier - BBC News

(引用者訳)先代の日本の天皇であるヒロヒトによる第二次世界大戦の回顧録が、ホロコーストと南京虐殺について否定したと非難を受けている日本人の外科医によって購入された。「天皇独白録」として知られるこの回顧録は、日本が戦争になだれ込むさまを、1945年8月の降伏に至るまで記録している。高須医師はニューヨークで開かれたオークションにて、27万5千ドル(20万5千ポンド)でこれを落札した。彼はアウシュビッツを「捏造」だとしているが、ナチズムには反対だと言う。

タイトルおよび記事本文から明らかなように、BBCの元記事は「天皇ヒロヒトの独白録が "ホロコースト否定発言を非難されている日本人医師" によって購入された」ことにフォーカスが置かれてているのですが、日本語版では高須院長の歴史修正主義発言について触れた部分は完全にカットされています

というわけで、BBC日本語版の記事については、国内向けになんらかの配慮が行われた表現になっているんじゃないかなーと訝しい感じがしますねえ。

BBCの他の記事も本家と日本語版で表現が違ったりするのかな? と思って、試しにこの記事執筆現在のトップニュースを比べてみました。

www.bbc.com

www.bbc.com

Israel's prime minister has said Palestinians must "get to grips with" the reality that Jerusalem is Israel's capital in order to move towards peace.

Benjamin Netanyahu said Jerusalem had been the capital of Israel for 3,000 years and had "never been the capital of any other people".

He spoke amid ongoing protests in the Muslim and Arab world at a US decision recognising Jerusalem as the capital.

引用元:Netanyahu: Palestinians must face reality over Jerusalem - BBC News
ドナルド・トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と承認したのを受け、アラブ・イスラム世界で激しい抗議デモが発生するなか、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は10日、和平に向け前進するにはパレスチナ人たちが「現実を直視」しなくてはならないと述べた。

ネタニヤフ首相は、エルサレムは3000年にわたってイスラエルの首都だったとし、「ほかの民の首都だったことはない」と語った。

引用元:パレスチナは「現実を直視」すべき エルサレムめぐりイスラエル首相 - BBCニュース

日本語版には「ドナルド・トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と承認したのを受け」という情報が付加されていたり、原文が3パラグラフに分かれているのをまとめて2パラグラフに短縮していたりといった違いはありますが、記事全体を通して元の記事に概ね忠実なものとなっていますね。

富岡八幡宮の事件についての報道はどうでしょうか。

www.bbc.com

www.bbc.com

英語版は日本刀を「サムライ・ソード」としていたり(日本国外の読者に説明するための苦肉の策でしょうか…)日本語版では「神道」についての説明をカットしていたりしますが、概ね英語版を元にした記事になっているようです。

昭和天皇独白録 (文春文庫)

昭和天皇独白録 (文春文庫)

 

日本語の情報ばかり信用するのはヤバいと思うよ

BBC日本語版を運営するのはBBCワールド ジャパンという会社のようですが、はたして「広告主として日本のメディアに大きな影響力を持つ高須さんに失礼なことを書いちゃやばいよね!」とか考えたのかどうかはわかりません。しかしこの件に限らず、「日本国内と国外で報道のニュアンスがぜんぜん違う」という例は枚挙に暇がないほどありふれています。

特に日本のネトウヨさんたちが執拗に話題にあげる「第二次大戦における日本の戦争犯罪」についての論争って、ネトウヨさん側に有利な見解を海外の報道機関が示すことなんて、ゼロですよ。

たとえばサンフランシスコの少女像の報道も見ても、国際メディアのほとんどが「大戦中の重大な人権侵害を反省しようとしない日本」というスタンスで記事を配信しています。「慰安婦はただの売春婦なのに韓国政府はことあるごとにこの問題を持ち出して不当に日本を批判しているのだ!!」みたいな産経新聞レベルの記事を書いている国際メディアがどこにありますか。あったらぜひ教えてくださいな。

特にBBCの本拠であるイギリスでは、現在でも大戦時の捕虜の扱いにまつわる反日感情、反皇室感情がありますからね。平成天皇の「即位の礼」にエジンバラ公が参列した際にも大きな批判があったようですし、90年代に当時の橋本首相が、あまり賢くない人々向けのお下品タブロイド紙「ザ・サン」に謝罪文を載せたニュースはわたしも覚えています。

そういった背景を考えに入れれば、今回の高須院長による「独白録」落札のニュースを国営メディアが「ヒロヒトの回顧録を、ホロコースト否定発言で非難されている医者が購入!」などと報道するのもむべなるかな、という感じですよねえ。

まあネトウヨさんたちは「まとめサイト」くらいしか読まないでしょうから「海外の報道がどうのこうの」なんて別世界の話なのかもしれませんけれどね。