エストニア共和国より愛をこめて

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアに暮らす大学生が、留学・観光・社会・市民生活などの話題を中心にさまざまな情報をお届けします。

大坂なおみ選手の記者会見に関する「フェイクニュース」に対しての再反論


『反日勢力を斬る』(笑)というブログからの反論

先日掲載したこちらの記事ですが、ホットな話題だったためか現在までに2万5000ほどのアクセスを記録しています。

www.from-estonia-with-love.net

記事に書いたとおり、

「ハフィントンポストの記者の質問がそもそもグダグダ過ぎたのは間違いないが、さらに通訳が誤訳してしまったせいでちぐはぐなやりとりになってしまったのではないか」

というのがわたしの見解です。

この件についてツイッターで反応を拾ってみたところ、大坂選手と通訳のあいだの英語でのやりとりまでチェックしたと思われる人は、概ねわたしと同意見のようですよ。

 

 

 ただしそれとはまったく逆の反応も来ました。次の『反日勢力を斬る』というブログの大阪(ママ)なおみ選手を人種差別問題にしたいハフポスト記者の愚という記事です。

なぜなら、この記者会見みながら通訳が上手いなと思っていたら、家人も「この通訳は上手いね」と言い出したので、通訳の名誉のためにミスとするのは忍びないと思ったからだ。

(引用元:反日勢力を斬る 大阪なおみ選手を人種差別問題にしたいハフポスト記者の愚

とのこと。さらに大坂選手の「それはテニスに関してか?」という確認に対しての濵田記者の応答を挙げて「エストニアにお住いの木野寿紀さんはこの重要な部分を取り上げていない」とおっしゃっておられます。

では、前回は省略してしまった後半部分についても大坂選手と通訳のあいだのやりとりをあらためて書き起こし、全文を掲載してみましょうかね。

www.youtube.com

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記者 「ハフィントンポストの濱田です。このたびは優勝おめでとうございます。

海外の報道などで、大坂さんの活躍ですとか存在というのが、古い日本人像を見直したり、考え直したりするきっかけになっているというふうな報道があるんですけれど、ご自身のアイデンティティという面も含めて、そのへんをどのように受け止めていらっしゃるのかお考えを聞かせてください」

通訳 「Foreign media, they are saying that...that your performance and victories remind us of (...) an old style of Japanese. How do you think of those comments, and what do you think of your own identity?」

(海外メディアが『あなたのパフォーマンスや勝利が古い日本のスタイルを思い起こさせる』と言っているが、そのようなコメントについてどう思うか。また、あなた自身のアイデンティティについてどう思うか)

大坂 「Me? I'm old style (...)??」

(わたしが? わたしが古いスタイルの…??)

通訳 「...remind everyone of an old Japanese style...」

みんなに古い日本のスタイルを思い起こさせると

大坂 「Tennis??」

(テニスについて??)

通訳 「Nah... I haven't really seen the articule...」

(いや、わたしはその記事を読んでないから…)

大坂 「Tennis??」

(テニスについて??)

通訳 「ごめんなさい、その報道は、テニスに関してそういうふうに報道されていんでしょうか?」

記者 「ええと、テニスと言うよりも、まあ、いわゆる古い日本人像というものがその、まあ、日本人の間に生まれた人が日本人というような古い価値観があるんだと思うんですけれど、大坂選手の活躍で、大坂選手のバックグラウンドなどが報道されるなかで、そういった価値観というのが少し、変えよう変わろうという動きが出ていると思うんですけど」

通訳 「(...) old value of Japanese retual, in your tennis actually.」

(…古い日本のしきたり、そう、あなたのテニスについてです

大坂 「Ok... Umm, is that a question?」

(Ok, うーん、それは質問?)

通訳 「He wants to know how you feel about that...(...) how you think of your own identity as a Japanese.」

(それについてあなたはどう感じているか聞きたいと…あなたの日本人としてのアイデンティティについて)

大坂 「Firstly, ありがとうございます. Umm, I mean, I don't really think too much about my identity whatever. For me, I'm just me.. Um, and I know, that, the way I was brought up, I don't know, people told me I act kind of Japanese, so, I guess is that... but other than that... If you are talking about my tannis, I think my tannis is very, um..., not very Japanese so.

(まず、ありがとうございます。ええと、わたしはアイデンティティなどについてそれほど深く考えることはありません。わたしはわたしです。わたしの育ちから「あなたの振る舞いは日本人っぽい」と言う人もいますが。もしあなたがわたしのテニスについて言っているのならば、わたしのテニスがすごく日本的だということはないと思う)

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というわけで、大坂選手は(通訳が伝えたとおり)「あなたのテニスは古い日本のスタイルを思い出させると言われていますが、あなた自身のアイデンティティをふまえてどう思いますか?」と質問されたのだと受け取って回答しているようですね(だから最後にテニスのスタイルについて言及している)。

何度も書いているとおり、そもそもハフィントンポストの記者の質問が冗長かつ曖昧もので、英訳されることを想定していなかったことは明らかでしょう(おそらく事前に質問を準備したりなどしなかったのでしょう…)。

とはいえ「この記者が何を言おうとしているのかさっぱりわからなかった!」という人は、それはそれで日本語の読解力が怪しいと思いますよ。ましてや「大坂さんあなた何人ですか?」と解するのは、まあ記者を過剰に貶めたいあまりのフェイクニュースの類でしょうね。

さらに、いくら翻訳困難な質問だったとはいえ、さすがにこれを「海外メディアは大坂さんのテニスは古い日本人のスタイルを思い出させてくれると言っていますが」と訳すのは「誤訳」の範疇に入れざるを得ないと思われるので、「通訳さんが上手にかわした!」と主張するのは無理があるでしょう。

むしろ意図的に質問内容を捻じ曲げたのなら越権行為とみなされかねないケースのような気もするので、「もとの質問が翻訳困難だったせいだ」という正しい指摘はともかく、「通訳さんが機転を利かせたのだ!」という擁護は逆に通訳さんを困らせるんじゃないですかね(笑)

大坂なおみ帰国会見で『ハフィントンポストの浜田記者、バカ目立ちしてる』『強引に人種差別問題(特にハーフ)に関連付けようと質問したが、仕切りの通訳さんが上手にかわした。さすが IMG!』 - Togetter

日本に実際に存在する”ハーフ”差別を認めたくないのでは?

ハフィントンポストの記者の言う「海外での報道」ですが、これは実際にニューヨーク・タイムズがそういう記事を載せてますね

www.nytimes.com

Yet even as a new generation starts to embrace a broader sense of what it means to be Japanese, a conservative strain in the country clings to a pure-blood definition of ethnicity. Still, the Japanese media warmly welcomed Ms. Osaka’s victory as the country’s own.

若い世代は「日本人とは何か」について、より広い意味で捉えることを受け入れ始めているが、この国の保守派は「純血であること」という民族性の定義にしがみついている。それでも、日本のメディアは大坂選手の勝利を自国の選手の勝利として暖かく歓迎した。

引用元: In U.S. Open Victory, Naomi Osaka Pushes Japan to Redefine Japanese - The New York Times

記事全文の趣旨は、この記者が言う、

「ええと、テニスと言うよりも、まあ、いわゆる古い日本人像というものがその、まあ、日本人の間に生まれた人が日本人というような古い価値観があるんだと思うんですけれど、大坂選手の活躍で、大坂選手のバックグラウンドなどが報道されるなかで、そういった価値観というのが少し、変えよう変わろうという動きが出ていると思うんですけど」

に概ね沿ってますからね。実際にアメリカの超メジャーな高級紙がそう報じてるんです。日本には「純血の日本人こそが日本人である」「"ハーフ"は"異質"な存在」という差別が長らくあったけど、大坂選手や宮本エリアナらの活躍によって変わってきているよ、と。

でもこの『反日勢力を斬る』とやらは、そういった指摘を否定したいんでしょ?

"日本にはハーフに対する差別意識など無い。 むしろ芸能界では歓迎されているくらいだ。"

"朝日新聞系のハフポストが「日本人の間の生まれたのが日本人で、ハーフは日本人ではない」という日本人の古い価値観(?)を否定して貰いたくて質問したことは間違いない。"

引用元:反日勢力を斬る 大阪なおみ選手を人種差別問題にしたいハフポスト記者の愚

ハフィントン記者を叩いているひとたちのなかに、この手の意見の持ち主が一定数いる気がするんですよね。「ハフポストの記者はサヨクで、日本には"ハーフ"への差別なんかないのに、そういった差別が存在するかのように回答させたくて誘導したんだ!」みたいな(笑)

たしかに国籍やアイデンティティの話題ってそもそもセンシティブなものです。いやー、ハフィントンの記者はもっとうまい感じに質問できなかったのかなあ…。たとえば、

「日本には大坂さんに憧れてスポーツに打ち込む若者がたくさんいます。彼らのなかには、大坂さんのように多文化的なバックグラウンドを持つ選手も多くいることでしょう。大坂さんから彼らになにかメッセージを送るとしたら、どんなことを伝えたいですか?」

とかだったら、気持ちよく答えてもらえたんじゃないかなと思うんですが。どうでしょうかね。