エストニア共和国より愛をこめて

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアに暮らす日本人が、留学・観光・社会・市民生活などの話題を中心にさまざまな情報をお届けします。

「留学前に準備しておいたほうがいいことはありますか?」「古典文学ひととおり読んどけ!」


実はわたしは年少者に「アドバイス」だの「説教」だのするのが嫌いなので(こんなにエラソーなブログを書いているくせに意外でしょ)、他人に「これを読め」だの「これを聴け」だのも基本的に言わない人間なんですけれどね。でも、もしもエストニアに留学する予定の若い人に、

「日本にいる間になにか準備しておいた方がいいことがありますかー?」

なんて尋ねられたとしたら、迷わずこう答えますね。

「いわゆる日本の文豪の有名な作品、三島由紀夫だとか太宰治だとか谷崎潤一郎だとか志賀直哉だとかの代表作を、ひととおり読んでおくこと」

…いやね、このへんやっぱり聞かれるんですよ、日本研究を専攻している学生に会うと。村上春樹じゃなくて、谷崎や太宰の話を振ってくる子がいるんです。

こちらで日本語や日本文化を学んでいる学生は、やはりアニメや漫画などをきっかけに日本文化に興味を持ったというパターンが多いのですが、大学の授業では歴史や文学についてもきっちり学ぶんですよね。なので「わたしは歌人では西行が好きなのですが…」とか話しかけてくれる子がいたりします。

もちろん日本研究の学生以外と文学の話をする機会もありますから、日本文学に限らず海外の古典にも目を通しておくとなおよいでしょうね。

こっちに来て気づいたんですが、なんだかんだ言ってヨーロッパの大学は教養主義の伝統が残っているのか、賢い子たちはやっぱりそれなりに読書をしてますね

悪の読書術 (講談社現代新書)

悪の読書術 (講談社現代新書)

 

昨年秋に学生旅行でサンクトペテルブルクに行ったときはみんなとドストエフスキーの話をしたりだとか(わたしも『ラスコーリニコフ君はこの街で金貸しのおばあちゃんを…!!』とか盛り上がってました)。

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

 

ほかに、友人のエストニア人で「ラテン語とフランス語を専攻してます」「夏休みの間は博物館でガイドをやっています」という才女がいるんですが、文学史の授業でいっしょになったときに彼女に愛読書を尋ねたら「ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』かな。原著(ロシア語)で読んだよ」ってな答えが返ってきました。

巨匠とマルガリータ(上) (岩波文庫)

巨匠とマルガリータ(上) (岩波文庫)

 

(※今回紹介している本のうちこの『巨匠とマルガリータ』だけ未読です)

何度か書いているように、わたしって現在はほとんど読書をしないし、ついでに言うと音楽もあまり聴かない(演奏でちょいちょい収入を得ているくせに!)人間なんですよね。これじゃいかんなとは思っているんですけど。

ただ、中学生~20代前半くらいの頃に、意識的に「古典」といわれる作品ばかりたくさん読んでいた時期があるんです。

小学校高学年あたりはミステリ好きで、早川・創元のクイーン、クリスティなんかに熱中してたんですが、中学生になると「もっと教養をつけなくてはいかん」と、背伸びして純文学を手に取るようになりました。

十代後半以降はバンド活動に忙しかったのですが、それでも「年をとったら視力も体力も落ちるんだろうからいまのうちにちょっとでも読んでいたほうがいい」と思って、カフカだとかカミュだとかサガンだとかサリンジャーだとかカポーティだとかの代表作だけをつまみ食いしてた感じですかね。なので当時の読書量自体は全然大したことはありません。月にせいぜい数冊程度だったかな。

しかし、その頃の貯金がいまでも結構効いてる感じがするんですよね。せっかくヨーロッパで大学生をやっているわけですから、ほかの学生とちょっとは知的な会話をしたいじゃないですか。ドイツ人に「『車輪の下』って中学のころ読んだけどほんと泣けたわ~」とか、フランス人に「カミュの『異邦人』っていい本だったわー太陽がまぶしいぜ!」とか話を振ってみると、この手の青少年向けマスターピースは向こうもたいてい読んでいるので、会話が弾みます。数は大したことがなくても、若いころにそれなりに文学史をふまえた体系的な読書をしておくと、こういういいことがあるわけです。

でもこの手の「教養主義」っぽい発想っていまの日本では流行らないのかなあ。日本のニュースで読みましたが、なんか高等教育政策も「役に立たない文系学部はどんどん潰して、もっと実用的な読み、書き、そろばんを!」みたいな方向に向きつつあるんですよね?

「はてなブログ」の世界はかなり二極化している感じがします。学術・教養書を多数紹介した記事がバズったりする一方で、その逆もすごい。「プロブロガー」なんてのを自称するペラい若者の一群がいるじゃないですか。あのへんの人たちがブログに書いてる「大学生に(若者に)おすすめする10冊!」みたいなアフィ記事なんかすごいですよ。

彼らは「金持ち父さんがナントカ」だの「夢をかなえるゾウがどうした」だのといったマネー本や自己啓発本、ホリエモンがゴーストライターに書かせた本だとか、いかにもアレな感じの書籍を恥ずかしげもなく紹介しちゃってたりします。間違ってもゲーテとかバルザックとかドストエフスキーとかバタイユとかショーペンハウエルは出てきません。

まあ彼らはあくまでペラいワナビー層をターゲットにしたアフィ収入が目的なわけですから、仮にかくれた古典文学の愛読者だったとしてもその手の売れなそうな本は紹介しないんですよね。金儲けにならないので。

さて。せっかくなのでわたしが昔読んで「面白いなあ」と思った本(古典文学に限らず)をいくつか(アフィリンク付きで)紹介しときますね。儲からないだろけど。

日々の泡 (新潮文庫)

日々の泡 (新潮文庫)

 
若きウェルテルの悩み (岩波文庫)

若きウェルテルの悩み (岩波文庫)

 
カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

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ウィトゲンシュタイン (現代思想の冒険者たちSelect)

ウィトゲンシュタイン (現代思想の冒険者たちSelect)

 
デリダ―脱構築 (現代思想の冒険者たち)

デリダ―脱構築 (現代思想の冒険者たち)

 
Justice: What's the Right Thing to Do?

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Globalization: A Very Short Introduction (Very Short Introductions)

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