エストニア共和国より愛をこめて

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアに暮らす大学生が、留学・観光・社会・市民生活などの話題を中心にさまざまな情報をお届けします。

【コラム】「下町ボブスレー」という「日本スゴイ」の大失敗案件


「日本スゴイ」の大失敗?

「下町ボブスレー」の件、「『日本スゴイ』の大失敗案件」として日本語インターネットの世界でえらく話題になっているみたいですねえ。

【追記あり】「下町ボブスレー」案件に見る日本の技術力の衰退と手段の目的化という本末転倒、質の悪さを棚に上げジャマイカに損害賠償請求も | BUZZAP!(バザップ!)

「日本の技術の凄さを世界中に見せてやる!!」と、日本の技術の粋を集めて鳴り物入りで開発が進められ、国の支援まで投入された国産ボブスレーですが、日本代表チームを含め世界のどのチームにも使ってもらえなかったという。

なんとかジャマイカの女子代表チームに使ってもらえる話になっていたようですが、世界に誇る日本の町工場の神業技術を結集した製品より、ラトビアの零細企業が造ったソリのほうがずっと優れていたということで、使用を断られてしまったとのことです。

選手たちにとっても、オリンピックという晴れの舞台に立つわけですから、すこしでも性能が優れていて、安全性の高いソリを使いたいというのは当然なのではないでしょうか。

「そこをなんとか! 日本の町工場のオヤジたちの顔を立ててやってください!!」

とかお願いしても、そりゃ首を縦に振ってもらえることはないんじゃないですかねえ。

そもそも、「日本が世界に誇るものづくりの技術」を象徴する町工場の神業職人たちのことですから、わたしはてっきり、

「われわれの製品より優れたものを見つけたんですね。わたしたちの技術の負けです。どうぞラトビア製のソリで良い成績をおさめてください。わたしたちはその優れたラトビア製ソリを徹底的に研究し、次のオリンピックまでには世界一のソリを完成させてみせます。他国の技術を謙虚に学び、それ以上のものを実現してみせるのが日本の職人の精神です」

とか返すのかと思ったら、「なんでうちの製品を使ってくれないんだ!約束が違うじゃないか!」と、損害賠償の請求をちらつかせているんだそうです。さすがクール・ジャパン(笑)!!

 

「日本の職人芸」神話、そろそろやめませんか?

日本の中小零細企業の高度な技術が、この国の産業を長いあいだ支えてきたのは疑いようのない事実です。特に東京下町の金属加工の町工場の世界レベルの技術の高さなどは賞賛を集めていますよね。

でもね、そこにいちいち、

「世界が絶賛!日本の町工場のすごさ!他の国には決してマネの出来ない超絶的神業!!」

みたいな国粋主義っぽいフレーズを持ってくるの、いいかげん恥ずかしいのでもうやめませんか?

だいたい「下町ボブスレー」の件も、もともと大田区の工業地域のブランドPRだったのものが、「日本の技術の威信をかけたプロジェクト」みたいなものに気持ち悪く発展しちゃったのが問題なわけでしょ? ジャマイカの代表に、

「今回のオリンピックで活躍できたのは、すばらしい日本の町工場の技術のおかげです! ウィー・ラブ・ジャーパーン!職人バンザイ!」

とか言わせて美談に仕立て上げて、

「ジャマイカチームの活躍の裏には、日本の町工場のオヤジたちの神業的技術があった…」

みたいなドキュメンタリー番組を作ったりだとか、どうせそういう魂胆だったんでしょう。

でもね。わたしは日本に住んでないのでよくわかるんですが、その手の「町工場の頑固オヤジたちが、家族を犠牲にして、不眠不休でつくりあげた、汗と涙と根性の神業技術!」みたいな竹槍ストーリーが好きなのって、おそらく世界でも日本人だけなんですよ。

「われわれはろくに睡眠時間を取りません。休暇なんて何年も取ってません。家族とも遊びには行けません。生活はすべて犠牲にして、仕事だけに熱中してきました。これが日本の工業技術の高さの秘密なのです!!」

とか力説しても、少なくともわたしが住んでいるヨーロッパの人たちに言っても意味がわからないと思います。まあ別の意味で「日本ってすごいですね…」とは言ってもらえるかもしれませんけどね。

まあ「国内向けにしかならないことはわかっていても『日本スゴイ』をやりたいんだ!!」ってんなら勝手にやればいいと思いますが、今回みたいに外国を巻き込むのはやめてもらいたいものです。国のなかだけでやっていればいいのにと思います。