エストニア共和国より愛をこめて

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアに暮らす大学生が、留学・観光・社会・市民生活などの話題を中心にさまざまな情報をお届けします。

ヘイトスピーチ容認論者の「ろくでなし子」こそ表現の自由の敵である



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(引用元:https://twitter.com/tokyonohate/status/906115334381346816

「Twitterの通知が来ると、怖いです。つらいです。苦しいです」

わたしがまだ日本で暮らしていた2014年当時に代表をつとめていた反差別団体「TOKYO NO HATE」が、東京の Twitter Japan 本社前で次のようなアクションを行いました。

 

www.buzzfeed.com

同社前の歩道には、事前にTwitterの「ヘイト行為に対するポリシー」に反しているとして通報したものの、抗議前日までに削除されなかった投稿約400件を印刷した紙が敷き詰められた。

(引用元:「毎日、通知が来ると怖いです」ヘイトスピーチ被害に遭っている女性がTwitter本社前で訴えたこと

 

抗議行動の詳細については同記事にて写真付きで紹介されておりますので、ぜひそちらをお読みいただければと思います。さらに主催の TOKYO NO HATE の twitter アカウントには tiwtter ユーザーからの反応が数多くリツイートされていますので、興味がある方はそちらから「ネットの声」を拾ってみてください。

抗議行動の中ではヘイトスピーチ被害当事者によるスピーチも行われたようです。BuzzFeed の記事から引用します。

 

笹本社長、Twitter社の皆さん。私は朝鮮人です。Twitterで毎日、死ね、殺せ、出て行け、ゴキブリ……そういう風に書かれている朝鮮人です

私にとってのTwitterは、花芽が出たらうれしくて、つぼみが膨らんだらうれしくて、花が咲いたらうれしくて、大切な人たちに知らせたくて、夜空に月が見えたらそれがうれしくて、それをツイートする。そんな心豊かな大切なコミュニケーションツールでした。

それが今は「死ね」「出て行け」「殺せ」「ゴキブリ」「いなくなれ」……。毎日Twitterの通知が来ると、怖いです。つらいです。苦しいです。

笹本社長、Twitter社の皆さん、どうか助けてください。

(引用元:「毎日、通知が来ると怖いです」ヘイトスピーチ被害に遭っている女性がTwitter本社前で訴えたこと

(※太字による強調は引用者)

 

この記事をお読みのみなさんにはわざわざ説明するまでもないと思うんですが、日本ベースのSNS上でもっとも苛烈なヘイトスピーチ被害を受けているマイノリティーは在日韓国・朝鮮人の人たちでしょう。「twitter を開くたびに『死ね』『出て行け』『殺せ』『ゴキブリ』『いなくなれ』などの通知が来るのはつらい」というのは、大変切実な訴えだと思います。

しかし人権水準が低い日本のことですから、こういった訴えをする人が出てくると必ずと言っていいほど被害者の側を攻撃する人が登場します

今回の件でいうと自称芸術家の「ろくでなし子」の発言などは典型的でしょう。

 

 

 「『死ね』『出て行け』『殺せ』『ゴキブリ』『いなくなれ』と言われてつらい」という訴えに対して、ろくでなし子のように「ならば被害者が出て行けばよい」「マイノリティ排除」を平気で主張する人間が出てくるのが日本です。

ただし、ろくでなし子の「ヘイトスピーチを浴びるのが嫌ならば在日は(またはアイヌは、部落出身者は) SNS を使わなければいい」という主張は、抗議対象になっている Twitter Japan ですら容認しないと思いますよ?

 

 

 

それ以前に、そもそも twitter は利用規約にてヘイトスピーチの投稿を明確に禁止しているんですよね(自社の規約で定めているのにも関わらずヘイトスピーチを削除しないから抗議されているわけで)。

 

ヘイト行為: 人種、民族、出身地、性的指向、性別、性同一性、信仰している宗教、年齢、障碍、疾患を理由とした他者への暴力行為、直接的な攻撃、脅迫の助長を禁じます。また、以上のような属性を理由とした他者への攻撃を扇動することを主な目的として、アカウントを利用することも禁じます。

引用元: The Twitter Rules | Twitter Help Center

 

「ろくでなし子」こそ表現の自由の敵である

ろくでなし子についてはわたしは以前から公然と批判をしていますが、今回の件を持って「ろくでなし子をはっきりと糾弾対象にしていくべきである」と確信しました。なぜなら、端的に言って「ろくでなし子のようなヘイトスピーチ容認(さらにはマイノリティー排除も)を公言する表現者こそが『表現の自由の敵』であるから」です。

くわしくは専門書(例えば師岡康子著『 ヘイト・スピーチとは何かなど)を読んでいただければと思うんですが、世界各国のヘイトスピーチ対策はおおむね次の3つの形態に分類できます。

ヨーロッパ型: ヘイトスピーチを法律で規制する

ご存じのとおりヨーロッパ諸国にはヘイトスピーチを規制する法律が存在します。ドイツでヒトラーを賛美する発言をしたりナチス式敬礼をすれば訴追されますし、オランダで反移民発言をした政治家も罪に問われました。わたしが住むエストニアでも民衆を煽動する発言は罪に問われるようです。

アメリカ型: ヘイトスピーチそのものを法規制しないが、ヘイトクライムへの加重罰、社会的制裁が行われる

アメリカは合衆国憲法に基づいて「表現の自由」を非常に重視するので、ヘイトスピーチを法律で規制するという考え方を取りませんが、代わりに厳しい社会的制裁が加えられたりします。アメリカでの「人種差別発言に巨額の賠償金請求」「SNSにヘイトスピーチを投稿した会社員が即時解雇に」といったようなニュースは日本でもたびたび報じられるので、ご存じの方も多いかと思います。またヘイトクライムに対してはその他の動機による犯罪に比して重い罰がくだされるのが通常です。

日本型: ヘイトスピーチを放置する

日本はアメリカと同様、表現の自由を最大限に尊重しますが、しかしアメリカのような差別煽動に対する社会規範を持たないために、事実上ヘイトスピーチは野放しとなってきました。2016年の「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(いわゆるヘイト対策法)の成立をもってようやく取り組みがスタートしたという段階という後進国ぶりです。

 

日本のいわゆる「反・表現規制派」は、大多数が「日本型を現状維持するべき」という意見に収斂するようです。ヘイトスピーチ容認論者のろくでなし子もここに該当するといえるでしょう。

しかし、世界の潮流は後進国・日本とは逆です。明確に「インターネット上からもヘイトスピーチを排除すべきだ」という流れになっていますから、ボーダーレスで運営される SNS について「日本ではヘイトスピーチへの罰則はない!!」「日本には日本のやり方がある!!」と喚いてもそろそろ通用しないんじゃないですかね。

「表現規制反対派」の(中の比較的賢明な)人たちは、おそらく「日本型を維持するのが無理なら、せめてアメリカ型を」という方向で考えているのではないかと思います。「国家による表現の自由への介入は出来る限り避けたいので、サービス運営者による自主規制や対抗言論をもってヘイトスピーチに対抗すべきだ」というのはたしかに比較的まともな考え方ですね。さもなくばヨーロッパ型の「国家権力によるヘイト表現の規制」を採用せざるを得なくなるわけですから。

TOKYO NO HATE による昨晩の Twitter Japan 前でのアクションはまさにそれを促すものなわけですから、日本の表現規制反対派はむしろ支持するべきものなわけです。しかし実際に彼らの口から出てくるのは、ろくでなし子に代表されるような「被害者に対する攻撃」や、または「このような抗議行動はヘイトスピーチの自由に対する侵害である!」といった声ばかりというのが現状のようです。「サービス運営者は適切な自主規制をせよ」という、表現の自由を守ろうとする抗議にすら罵声を浴びせているわけですから、「こりゃ日本にもヨーロッパ型の表現規制が必要なんじゃないか」という意見のほうがますます説得力を増すんじゃないですか。

以上の理由から、わたしの結論は「ヘイトスピーチ容認論者の『ろくでなし子』こそ表現の自由の敵である」となります。なにぶんわたしはかつて数十年にわたり全体主義のもとに市民が自由を制限されていた国に住んでいますので、「表現の自由」の大切さは痛感しています。「表現の自由」を尊重するわたしはこの自称芸術家を今後もきっちり批判していくことにします。