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エストニア共和国より愛をこめて

北欧の小国に留学中の大学生が当地への留学や観光、社会生活についての情報などをお届けします

上野千鶴子が珍しく真っ当なことを言っている<訂正あり>

昨日「上野千鶴子がおかしなことを言っているらしい」と聞いて、常日頃から日本の「社会学者」という人種に肌に粟を生じるほど嫌悪感を持っているわたしはウキウキしながらリンクを開いたんですよね。下の記事です。

chuplus.jp

ということで一読してみたのですが、なあんだ、今回に限っては上野千鶴子も概ねまともなことを言っているじゃないですか。がっかりしました。

末尾近くの「NPOがどうのこうの」とか「立憲主義の理解が」とかいったあたりは何を言っているのかよくわからなかったのですが(インタビュアーの責任かもしれませんが)、他の部分については概ね同意です。

<2017年2月21追記>

上記で「(末尾近くの部分以外は)概ね同意」を表明していましたが、この部分について松沢呉一氏より重大な指摘をいただきました。

上野氏ヘのインタビューの文中に、

日本はこの先どうするのか。移民を入れて活力ある社会をつくる一方、社会的不公正と抑圧と治安悪化に苦しむ国にするのか、難民を含めて外国人に門戸を閉ざし、このままゆっくり衰退していくのか。どちらかを選ぶ分岐点に立たされています。

引用:この国のかたち 3人の論者に聞く | 考える広場 | 朝夕刊 | 中日新聞プラス

という部分があり、「移民を受け入れる」か、「難民を含めて外国人に門戸を閉ざす」か、という二者択一を設定しています。

次の節は難民についではなく「移民の大量受け入れ政策の是非」を問うたのちに、移民の受け入れはやめたほうがいいという趣旨を述べ、

「だとしたら、日本は人口減少と衰退を引き受けるべきです」

と論を進める流れになっています。このため、上野氏が自身の設定した選択肢のうち「難民を含めて外国人に門戸を閉ざす」、すなわち「移民だけではなく難民についても受け入れをしないほうがいい」と結論付けたとする文章になっています。

筆者はこの点に気づかず「(末尾近くの部分以外は)概ね同意」と表明してしまいましたが、「難民を含めて」の部分への同意については撤回します。難民条約加盟国である日本にとって、難民の受け入れは義務であり、上野氏による経済移民の受け入れの是非とは別の人道的問題であるためです。

また、上野氏もすでに自身のブログで「日本の難民受け入れが極端に少ないことは是正すべき」と、自身が難民の受け入れ拒否を主張しているわけではないことを表明しています。

  • 人口構造を考えると、日本の社会規模を維持するためには移民の受け入れしかない
  • しかしいまの日本の状況を考えると、移民受け入れは無理だろう
  • となると衰退は確実だ。国全体がひたすら貧しくなるなか、うまく再分配をしていくしかないだろう

まとめるとこういった感じになりますかね。至極まっとうだと思います。賛否はあるかと思いますが、意見としては筋が通っていますね。わたしもこの意見にはだいたい賛成、というか、「他に方法がないのだから、この『ひたすら貧しくなっていくなかでうまく分配しよう』という案を受け入れるしかない」という考えです。

実を言うとわたしも日本にいる間は、

「日本も近い将来、大規模な移民受け入れを始めることになるだろうなあ。人口構造を考えると他に方法は全くないわけで、財界なんかもそのあたりはよくわかってるだろうし。それどころか、すでに首都圏も地方工業都市外国人労働者なしでは成り立たなくなっているし。どんどん外国人労働者を受け入れていくことになるんだろうなあ」

とか、のんきに考えていたんですよねえ。無根拠に楽観視していたわけです。

しかし、わたしの予想には重大な観点が抜け落ちていました。

「このままいけば衰亡が確実な国に、わざわざ人生を賭けて移民をしてくれる外国人が、本当にそんなに多数存在するのか?」

という点です。

日本の今後の移民政策を語る際に、右も左も、

「日本への移民を希望してくれる外国人が世界には数百~数千万人存在するはずである」

みたいな前提で話をするのはいったい何なんでしょうかね。

わたし自身もすでに事実上の経済移民といっていいと思いますが、わたしの場合はエストニアの世界最先端の電子国家政策、IT産業のレベルの高さ、教育水準の高さといったものに魅力を感じてここに来ました。大学を出たらぜひこの国で働きたいと考えています。

でも、いまの日本にそういった魅力ってありますか? 日本に移民するとなにか得することがあるのでしょうか?

そもそも「日本の人口規模を維持するための移民受け入れ」って、

「自分たちの数十年に渡る失政のために少子高齢化が回復不可能なレベルにまで進行してしまい、このままでは国家の衰亡が不可避なので、外国人労働者を数百(数千)万人連れてきて働かせて国を支えさせよう」

って話なわけですよね。日本の無策のせいで国が滅ぼうとしているのに、新しい福祉負担要員として外国人を連れてきて働かせて助けてもらおうという。そしていろいろな労働分野もカバーしてもらえばいい、介護をやらせよう、家事労働をやらせよう、危険な肉体労働も…って。これ、移民する人にはどういったメリットがあるんですか?

日本って英語は通じないし、労働環境は劣悪だし、先進国としては賃金が低いし、国民も排他的だし…などといった悪条件が揃っている国ですよ。そればかりか、いまでも中国やベトナムから「日本の技術を学びたい」と希望する若者を騙して連れてきて、とんでもない低賃金の強制労働を課して搾取するという、外国人労働者の人権なんぞまったく無視の国家ですよ。そんな国に、人生を捧げて移住してくれる外国人がそこまでたくさんいると思いますか?

日本をここまで二進も三進もいかない状態に追い込んだのは日本の有権者や政治家が怠惰だったせいなのだから、本来は「外国人を連れてきて働かせ、国を延命しよう」ではなく、日本国民で責任を引き受けるべき問題ではないのでしょうか。なぜ外国にまで迷惑をかけようとするのでしょう。

だとしたら、日本は人口減少と衰退を引き受けるべきです。平和に衰退していく社会のモデルになればいい。一億人維持とか、国内総生産(GDP)六百兆円とかの妄想は捨てて、現実に向き合う。ただ、上り坂より下り坂は難しい。どう犠牲者を出さずに軟着陸するか。日本の場合、みんな平等に、緩やかに貧しくなっていけばいい。国民負担率を増やし、再分配機能を強化する。つまり社会民主主義的な方向です。ところが、日本には本当の社会民主政党がない。

引用:この国のかたち 3人の論者に聞く | 考える広場 | 朝夕刊 | 中日新聞プラス

この部分に関してはまったく正しいと思います。繰り返しになりますが、日本に再びの経済成長などありえません。これからひたすら衰退し、貧しい国になっていくことが確定しています。となると、今回上野が提案しているような「衰亡が確実な状況のなかで、なおあきらめずに最善手を探る」ことこそ必要なのではないでしょうか。もう「この道しかない」んです。それを認めることから始めましょうよ。