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エストニア共和国より愛をこめて

北欧の小国に留学中の大学生が当地への留学や観光、社会生活についての情報などをお届けします

日本の大学生は本当に勉強していないのか

 先日のこちらの記事ですが、けっこうたくさんの方に読まれたようです。

www.from-estonia-with-love.net

いくつかご意見をいただいたのですが、そのなかに、

「昔の大学生とは違って、いまの大学生はかなりまじめに勉強するし、課題もたくさん出されますよ」

というものが複数ありました。

ということで、今回は、

「(近年の)日本の大学生は本当に勉強していないのか」を、各種データを元にちょっとだけ検証してみることにしますね。

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(小方, 2008)

*筆者注:グラフは日本労働研究機構『日欧の大学と職業』のデータを元に作成したものとのこと。同データは1998年から1999年にかけて行われた調査で収集されたものである。

これはかなり古い調査(20年近く前)によるものなのですが、このデータには往時の日本の大学の学習形態の特徴が如実に表れておりますな。グラフの「学期中 授業外での学習」にご注目ください。

ノルウェー 24時間
イタリア 23
オーストリア 19
スペイン 17
イギリス 16
オランダ 15
ドイツ 15
フィンランド 14
フランス 13
日本 7

ごらんのとおり、日本はダントツに「授業外の学習」の時間が短いんですよ。家や図書館などで予習・復習をしたり、課題をやったりする時間が非常に少ないというわけですね。ノルウェーの3分の1にも満たず、10か国中ワースト2であるフランスのさらに半分くらいです。

その反面、授業への出席時間はかなり長いほうですね。ノルウェー13時間に対して日本は22時間あって、ドイツ、スペイン、フランスとほぼ並んでいます。

「授業への出席」と「授業外の学習」をプラスするとこんな感じになりますね。

ノルウェー 37時間
イタリア 41
オーストリア 32
スペイン 41
イギリス 33
オランダ 28
ドイツ 35
フィンランド 27
フランス 35
日本 29

ヨーロッパ諸国との差はぐっと縮まるものの、それでも「それほど長い時間は勉強していないほう」の部類ですね。意外にイタリアとスペインが長時間勉強してます。

先にことわっておいたとおりかなり古いデータなんですが、日本の大学における学習形態の特徴として「授業外の学習時間が非常に少ない」というのが、少なくとも1990年代末にはあったわけですね。

「いや、それは昔の話で、いまの学生はもっとたくさん勉強しているんだ!」といった意見もいくつかもらっているのですが、それを裏付けるデータはなかなか見つかりません。

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(文部科学省, 2012)

*筆者注:グラフの出典は東京大学 大学経営政策研究センター(CRUMP)『全国大学生調査』(2007年)とのこと

これも10年くらい前の調査を基にしたもののようですが、ごらんのとおりアメリカの大学生に比べて日本の大学生はあまり勉強していませんねえ。てか、「学習時間ゼロ」の学生が日本には9.7パーセントも存在しているんですが。「学習時間1~5時間」という学生を加えると70パーセント近くになっちゃいます。

*ただしこの文科省の『学生の学修時間の現状(PDF)』という資料はちょっと面白くて、4年生になると日本の理系・文系学生ともに授業外学習時間がアメリカの学生を上回る、とまとめられています。とはいえ基本的には日本の大学生の学習時間の短さをdisる内容

いろいろ調べてみたんですが、現在のところわたしは「実はいまの日本の大学生はヨーロッパやアメリカの大学生に匹敵するほど勉強していた!」という資料を見つけられていません。逆に日本の大学生の「授業外学習時間の短さ」を指摘する資料ばかりが目についちゃうんですけれども。

さらに「日本の大学は他国の大学と比べて卒業が簡単なのか?」という点もちょこっとだけ調べてみましょう。

これもかなり古いデータを元にしたもので申し訳ないんですが、OECD(2005年)の調査を元に作成された「エコノミスト」WEB版によるグラフです。

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(Top of the class, 2007)

ごらんとおり、日本は大学進学率は低いのですが、卒業率が非常に高いのですね。いちど大学に入ってしまえば、卒業するのは比較的簡単であると。さらに先の学習時間のデータと併せると「授業外の学習時間(=宿題や自主的な予習復習)がかなり短いのにもかかわらず」ということになるんじゃないでしょうか。

というか、そもそも日本の大学で「成績不良による除籍」って一般的なんでしょうか? 前回書いたとおりヨーロッパの大学ではそういった規定が存在するのが普通で、わたしの在籍している大学の場合「セメスターごとの取得単位が22.5 ECTS(=ヨーロッパ単位互換制度における単位)に満たないと自動的に除籍」となっています(あと前回の記事では書き落としていたけど『必修科目を2回落とすと除籍』という規定もあります)。

今回は古めの資料をもとにした考察ばかりになってしまったのは申し訳ないです。しかし「実はここ10年とか20年でめちゃめちゃドラスティックな変化があったのだ!」というわけでなければ、やっぱり日本の大学生ってヨーロッパの大学生と比べて勉強していないのではないか、簡単に卒業できてしまうのではないか、という推定になっちゃうと思うんですけれどもどうですかね。

<参考文献>

小方直幸 (2008). 「多様化する学生」安原義仁, 大塚豊, 羽田貴史(編著)『大学と社会』, 放送大学教育振興会, (pp. 163-179)

文部科学省 (2012). 「学生の学修時間の現状」. Retrieved April 11, 2017, from

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/siryo/attach/__icsFiles/afieldfile/2012/07/27/1323908_2.pdf [PDF]

Top of the class. (2007, September 18). Retrieved April 11, 2017, from