エストニア共和国より愛をこめて

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアに暮らす大学生が、留学・観光・社会・市民生活などの話題を中心にさまざまな情報をお届けします。

日本の「就活」をヨーロッパの人に説明するのは本当に大変

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ヨーロッパのメディアが報じる「日本の就活シーズン」

いきなりですが、下に掲載したのは4年前に「ユーロニュース」が報じた日本に関する動画です。ごらんください。

Japan's annual job-hunting season leaves one in five college students suicidal
(毎年恒例の日本の就活シーズンには5人に1人の大学生が死を考えます)

www.youtube.com

英語がわからなくても、だいたいどんなことを伝えているのかは想像が付くかと思いますが(笑)、たとえば0分27秒あたりで就職活動中の学生の発言を引用して、

"In Japan all students begin job hunting at the same time", said the student, "...so it really depends on how fast you can get a job".

(この学生によると『日本ではすべての学生たちが一斉に就職活動を始めるので、就職を決められるかはいかに早く動けるかにかかっている』とのことです)

などと説明しています。わざわざこんな説明を加えていることからも想像がつくとおり、ヨーロッパでは「学生たちが、ある時期になると一斉に就職活動を始める」といったことはありません。というか、そもそも「新卒一括採用」という制度が世界的には極めて特殊な形態である日本型雇用システムの一部なわけで、他の国にそんな慣習が存在しないのはあたりまえなのですが。

ヨーロッパの人たちのかなり多くが日本人について「とかく集団行動を好む人々」というイメージを持っていますが、この「同じ年齢層の学生たちが、同じ髪型と同じ服装をして、全く同じ時期に就職活動を開始する」という現象はまさにそういったステレオタイプそのものですよね。というわけでごらんのとおりのニュアンスの報道となります(笑)

この日本独特の「就活」というイベント、また日本型雇用そのものについてもですが、ヨーロッパの人たちに説明するのは結構たいへんなんですよ。エストニアに来る前の留学準備期間中、わたしはセルビア人の先生に英語のオンラインレッスンを受けていたのですが、ある日「日本で就職活動シーズンが始まりました」みたいな英語ニュースをもとにちょっとしたディスカッションをしたことがあったんですよね。わたしが説明したのは、

  • 日本では、学校を卒業する前に職を見つける必要がある
  • いちど卒業してしまうと、在学中に求職活動をする学生とは完全に扱いを区別され、就職が著しく困難になる
  • 求職を開始する時期が慣習として決まっているので、学生たちはそれに従い、同時期に一斉に仕事を探す活動を始める
  • 日本には海外とは違う独特の雇用システムがあり、それに合わせてこのような特殊な慣習が存在する

といったことだったのですが、案の定いまいちうまくわかってもらえませんでした(笑) まあヨーロッパとは制度があまりに違いすぎますからね…。

 

ヨーロッパの人たちはどうやって仕事を見つけるの?

「じゃ、ヨーロッパの人たちはどうやって就職するの?」という質問をいただきそうなので、ちょっと説明してみますね。

まず、「新卒一括採用」のような制度がありませんから、仕事を探し始めるのは学校を卒業してからという人が多いですね。そのため日本の大学生のように「最終年度の時間の多くが就職活動に費やされてしまう」ということはないようです。というか日本と違って単位の認定や卒業の認定が厳しいので、学業以外のことに時間を使う余裕はそれほどないのではと思います。

ただし、在学中から休暇などを利用して企業へのインターンシップや短期のパートタイム勤務を経験する学生は非常に多いようです。日本の場合は企業が新入社員に給料を支払いながら仕事を教えてやるシステムになっていますが、ヨーロッパにはそのような制度がないので、フルタイムの職を見つけるためには一定の職業経験が必要になるためです。

日本と同じく、インターネットを介した求人・求職はかなり一般的なようです。一例としてエストニアの求人サイトを紹介しておきます。英語のサイトですのでおそらく外国人求職者を主な対象にしているサービスだと思います。もちろんネットからCVを送付できるようになっています。

www.workinestonia.com

あと、「知り合いからの紹介」で職を得るケースも結構あるようです。要はコネですね、コネ。

個人的な話になりますが、先日、友人を介してちょっとした仕事の依頼がありました。「iPad 用のアプリケーションを製作している知り合いがいて、アプリの日本語版を出すために翻訳者を探している」とのことで、たまたま時間があったのと報酬がよかったのですぐに引き受けたのでした。

ヨーロッパの場合、こんな感じで知り合いを介してちょっとした仕事依頼やパートタイムまたはフルタイムの求人情報などが回ってくることが結構多いです。日本でもある程度は同様かと思いますが、こちらはさらにもう少し敷居が低い印象があります。

最後に、これは特にエストニアでは顕著かもしれないのですが、企業に雇われるのではなく、自分で起業してしまう人がかなりいます。わたしの知り合いにも大学生として学びながらビールの輸出業をやっている人がいたり、小さな書店を経営している人がいたりします。エストニアという国自体が国家戦略として起業を奨励しているというのもありますし、日本のように「新卒での就職を逃すともとのレールに戻るのが困難」という事情もありませんから、わりとみんな気軽に事業を立ち上げるようです。

 

日本の採用制度、実は合理的?

日本においては「社会の理不尽に対して文句を言うのではなく、それを従順に受け入れて耐える能力」というのがとても大事ですから、就職活動をあえて「苦役」にして若者の根性を鍛えてやれ、というのはそれなりに合理的だと思います。就職後も同様で、最近では新入社員に「素手で便所掃除」をやらせたり、どこかの山奥に送って過酷な研修をやらせたりして、日本人としての精神を鍛えようというのも流行っているそうですね。

日本においては労働法なんてあって無いようなものですし、特に正社員は過酷な長時間労働やパワハラにも耐えなければなりません。となると「サービス残業は法律違反です」だとか「労基署に訴えます」などと労働者の権利を主張する社員が入社してしまっては困りますよね。なのであらかじめその手の危険分子を排除しておく必要があるわけです。そう考えると、採用選考の段階から過酷なストレスを与えておいて、耐えた者だけを選ぶというのは結構合理的な方法なのかなとも思うわけですよ。

まあ海外から見るとずいぶん異様なものに映るようですけどね。

www.youtube.com