エストニア共和国より愛をこめて

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアに暮らす日本人が、留学・観光・社会・市民生活などの話題を中心にさまざまな情報をお届けします。

【悲報】ついにエストニアでも極右勢力が台頭へ

f:id:kinotoshiki:20190321205729j:plain

無事に大学を卒業して現地で就職し、演奏活動も好調で充実した毎日を過ごしていて自分は本当に幸せだな、世界はバラ色だな~、…と思っていたところだったのですが、今月に入ってから急にエストニアの政治情勢が怪しくなりはじめています。

何が起こっているのか単刀直入に言うと、

「国政選挙後の政権に、ガチ極右政党が参加する方向で協議が進んでいる」

という事態が発生しております。

3月3日にエストニア議会選挙が行われたのですが、結果は現政権の議席減。政権交代が行われる見込みとなりました。しかし、現首相が「政権維持のために、今回躍進した極右政党と連立を組むことにした」と発表し、にわかに選挙後の政局となっております。

国内の新聞や放送局はずっとこの件ばかりとりあげています。Facebookでは外国人留学生や外国人移民たち(もちろんわたしも含む)が一斉に不安の声を上げ始めております。

ということで今回はこの話題を取り上げたいと思います。本題に入る前に、エストニアの国政についてちょっとだけ説明させてください。

エストニア議会は小党分立の傾向があるのですが、近年は

「中央党」Eesti Keskerakond (中道左派・再分配重視)

「改革党」Eesti Reformierakond (中道・経済成長重視)

の主要2政党を中心に、小規模な政党が連立を組んで政権を担当しておりました。

わたしがエストニアに来た2015年当時はロイヴァス首相率いる改革党が与党第一党でしたが、翌16年には政権交代があって中央党のユリ・ラタス現首相が首班指名され、社会民主党、および「祖国」(クリスチャン保守政党)との連立政権が誕生したのでした。

2018年に安倍首相が来訪した際の首相も、このラタスです。

 

www.from-estonia-with-love.net

そして今年、4年に1回行われるエストニア議会選挙の年を迎えたわけです。エストニア議会は一院制なので、この選挙が唯一の国政選挙ということになります。

選挙の結果は101議席中、与党第一党の中央党が26議席(減1)、野党第一党の改革党が34議席(増4)となり、連立相手の社民・祖国も議席を減らしたため、2年ぶりの政権交代が行われる見込みでした。

開票が終わった後は、だれもが疑いなく「改革党を中心に連立がまとまり、カヤ・カラス改革党代表がが首班指名される」と信じていました。

エストニアは大統領(儀礼的役割のみで行政への権限はない)が女性のケルスティ・カリュライドなので、「ついにエストニアは大統領も首相も女性に!」と、国際ニュースでも話題になっておりました。

 

www.instagram.com

そんなところに衝撃的なニュースが入りました。元首相である中央党代表のラタスが、「政権維持のために、保守人民党および祖国との連立を協議する」と発表したのです。

news.postimees.ee

「保守人民党」はここ数年ずっと話題になっているのですが、排外主義的政策を主張する極右政党です。これまで一桁台だった議席数が、今回の選挙で一気に19まで激増。全議席の2割弱を占める国会第三党に躍進したのです。

 

www.youtube.com

上の動画は先日の独立記念日を祝う保守人民党の集会のようすです。映像からも感じられるように、まあなんともウヨウヨしい集団でございます。

なおわたしはタリン大学で、この党所属の国会議員をやりながら大学教授を兼任しているセンセイの授業を取ったことがあります。冷戦時代にアメリカに逃れて学問を修めた人だったかな。大学で開かれた人権問題のシンポジウムに、「WE SUPPORT TRUMP!」とデカデカと描かれたバッジを付けて現れたり、まあいかにもな感じの人でしたけど(笑)

さてこの保守人民党ですが、外国人排斥・移民受け入れ反対・EU懐疑派と、過激な右翼政策を打ち出している政党ということもあって、中央党も改革党も「保守人民党と連立を組むことはありえない!」と明言していたんですよね、選挙前は。

中央党の主要な支持層は、エストニア人の中高年層、そしてロシア系住民です。保守人民党は結党時点から明確に反ロシアで、国内のロシア人の排斥も主張しているので(しかし同時にEUおよびNATO懐疑派でもあって、国防はどうするんだろう? 極右ポピュリズム政党らしく論理破綻が多い)、どう考えても中央党の支持層とは政策的に相いれません。

そこをいきなり手のひらを反して「これまで左寄りの政党ってことでやってきましたが、政権維持のために極右と組みます!」ですからね。中央党支持者からも激しい非難がよせられています。

先週末には、タリン大学の隣にある中央党のオフィスの窓に、何者かによって緑色の塗料でスワスティカが落書きされる事態も。わざわざ中央党のイメージカラーである緑のスプレーを買ってきたのか、聖パトリックデーに合わせたのかは謎です。

 

www.err.ee

まあこのような破壊的行為はともかく、極右政党の政権入りに反対する市民の間からも「ラタスよ、頭を冷やせ!!」という声が続々と上がっています。

 

news.postimees.ee

Facebookでは、日曜日の朝から「寛容なエストニアを支持する」意思を表明する Kõigi Eesti (みんなのエストニア)というムーブメントが始まり、わずか数時間で圧倒的な広がりを見せました。

特に若い世代の支持者が多いのか、エストニアの友人の大半がこの意思表示に参加しています(逆に歯ぎしりしている極右支持者もいるかも・笑)。

 

www.facebook.com

まあ、わたしも人民保守党のおじさま方が排斥の対象にしている外国人移民のひとりですからねー。「寛容なエストニア」を愛するものとして、また人権尊重・差別の禁止を定めたエストニア憲法に忠誠を誓うものとして、積極的にこのムーブメントに関わっていきたいと思いまーす

【追記】

さっそく抗議デモの予定が発表されました。

"Jah vabadusele, ei valedele!" (自由に賛成、嘘に反対!)

www.facebook.com

31日の日曜昼から、場所は旧市街の入り口であるヴィル門スタートとのことです。